〈長き夜や千年の後を考へる〉正岡子規。秋の夜空を見上げていると、その巨大なスケールと比べて自らがいかにちっぽけな存在か、と思いが広がっていく。ロマンチックな秋の句を詠んだ子規だったが、その生涯はわずか34年と短い◆晩年の未発表作品が見つかり、東京・根岸の子規庵で公開されている。〈寝後れて新年の鐘を聞きにけり〉〈暗きより元朝(がんちょう)を騒く子供哉(かな)〉。元朝は元日の朝の意味で、新年の鐘を聞き、子どもたちの活気で開けた新年の喜びがにじむ。正月に訪問客向けに準備した「歳旦帳(さいたんちょう)」の中に書き込まれていた◆だが、長らく伏せっていた子規の心情を考えれば、「これが最後の正月になるかもしれない」という切なさが、胸の片隅をよぎっただろう。秋の句にも、こんな作品がある。〈柿くふも今年ばかりと思ひけり〉。目にするもの、口にするもの、すべての生きる行為の向こうに、死の影が透けて見えたのかもしれない◆子規の命を奪ったのは「結核」だった。当時よりはるかに医学が進んだ現代でも、世界で20億人が感染し、年間死者数は300万人に達するという。日本国内でも1万8千人が新たに発症し、2千人が亡くなっている◆きょう24日から30日は「結核予防週間」。せきやたんが続くようなら、早めの受診を。「過去の病」と侮るわけにはいかない。(史)

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