アクティブ・ラーニングを取り入れた静岡県立川根高校1年の数学の授業風景=11月、静岡県川根本町

 次期学習指導要領で、高校でも全教科に取り入れられるアクティブ・ラーニング。小中学校と同様に生徒の主体的な学習につなげてほしいとの期待は大きいが、知識偏重の大学入試が壁になり、導入に消極的な学校も。文部科学省は入試改革を進めることで、現場での実践を後押しする。【共同】

 11月、静岡県立川根高校(静岡県川根本町)の1年数学。電子黒板の地図上には、東京タワー、スカイツリー、東京工業大、築地市場駅、亀有公園に印がある。冨田真永教諭(28)が「東京タワーとスカイツリーが同じ高さに見えるのはどこだろう」と問い掛けた。

 生徒から「亀有公園はスカイツリーに近すぎるから違う」との意見。グループに分かれ、東工大と築地市場駅の2カ所を確かめることになった。

 生徒は直前に、背の高さが違う2人の見た目の高さは視線の角度で決まることを確認している。「高さと距離から角度が求められる」「角度が同じになる場所なら見た目の高さが同じ」ことを導き、東工大から同じ高さに見えると結論づけた。

 単元は三角比の授業で、冨田教諭は「机上の問題を解く道具ではなく、実社会で有用性を感じることができる三角比の授業を目指した」と話す。

 「日常生活の現象を数学で説明できると気付いた」「公式は現実にも当てはめられることが分かった」。生徒も公式の意味を実感できたようだ。

 静岡大の益川弘如准教授(学習科学)は「知識を教え込んでも、多くの生徒は覚えるだけ。対話しつつ自分で考えるアクティブ・ラーニングなら、日常生活でも活用が可能になる」と指摘する。

 とはいえ、大学の合格実績が最優先の高校は多い。千葉県の50代の国語教諭は「今後も入試で知識ばかり問われるなら、授業の在り方を変えることはできない」と話す。中教審の答申は「知識伝達型の授業にとどまりがち」と高校の教育を批判する一方で、主体性や思考力などを多面的に問う大学入試への転換も求めている。

 既にアクティブ・ラーニングを積極的に取り入れている桐蔭学園高校(横浜市)の岡田直哉教諭(51)は「生徒が意欲的、主体的に考えるようになってきた。講義型とのバランスが大事になるだろう」と話している。

=識者談話=

 ■学校組織も対話的に

 高校教育に詳しい菊地栄治早稲田大教授(教育社会学)の話 これまで高校は、大学や就職など個人の進路実現を主軸にしてきた。社会の形成者の育成を目指す内容をより重視し、公共の教科化などで現代社会の課題と向き合う経験をさせることは望ましい。アクティブ・ラーニングが目指す、主体的・対話的で深い学びを実現するには、学校組織も主体的・対話的でなければならない。多様な生徒の実情を踏まえ、どんな学びが必要なのか、教員同士で積み上げてカリキュラムをつくる必要がある。

 ■前向きな取り組み重要

 藤田保上智大教授(応用言語学)の話 小学校で教科化される英語について、移行期間中の対応や教員研修の在り方などに、細かく言及した点は評価できる。教科化がうまくいけば、小学校から高校まで、全体的な英語力の底上げにつながるだろう。ただ、既に先行して積極的に英語に取り組んでいる小学校と、そうでない小学校との差は確実に出ている。全面実施に向けてこうした差を埋めるには、教員が前向きに取り組むことが重要だ。多忙な教員向けにインターネットを活用するなどして、中身の濃い研修を実施していくべきだ。

このエントリーをはてなブックマークに追加