墳形は不明だが、石室は現存している=伊万里市東山代町

■類例少ない冑、短甲出土

 夏崎古墳は、伊万里湾に面した伊万里市東山代町日尾丘陵先端の岸壁近くにある横穴式石室を持つ円墳です。古墳時代中期の5世紀末~6世紀初頭に造られ、江戸時代の削土で元の墳形は定かではありませんが、直径24メートル前後のかなり大規模な円墳であったと推測されています。

 幅1.9メートル、奥行き2.1メートル、天井高1.9メートルとほぼ正方体の石室は、南西に向かって開口し、朱塗りの壁で囲われています。

 石室に向かって左側に死床が設けられていますが、このような配置を持つ古墳は県内でも唯一といわれるほど非常に珍しいそうです。出土した遺物は甲冑(かっちゅう)、鉄剣、鉄刀、鉄鏃(てつぞく)=やじり=などがあり、1756年の干拓事業の掘削作業時に石室が発見され、内部から武具が発見されたことが古文書に記されていました。

 被葬者は定かではありませんが、夏崎古墳が築造された頃は大和政権が鉄資源などを得ようと盛んに朝鮮半島に兵を送っていた時期です。補給や出兵の基地として伊万里地方を重視していたと思われ、出土した遺物の中でも冑や短甲は他に類例が少ないため、相当に有力な人物であったと推定されています。

 近くには銭亀古墳という6世紀末の築造と思われる古墳もありましたが、今では工業団地となり滅失している上に、同時期の古墳や遺物が伊万里市では発見されていないこともあり、古墳時代の伊万里の文化を究明する上で極めて重要な史跡です。(地域リポーター・中尾良樹=伊万里市山代町)

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