多久市が造成した定住促進住宅団地。半数が市外の若い世帯の移住で占めた=多久市北多久町

■若者の流出対策不可欠

 1970年代、まちの繁栄を支えた基幹産業の炭鉱がすべて閉山し、今も衰退の歯止めがかからない多久市。ピーク時の60年に約4万5千人だった人口は、2015年にはついに2万人を割り込んでいる。9月3日告示、10日投開票の多久市長選を前に、活力を取り戻そうと苦闘するまちの姿を追った。

 「市内全域小中一貫教育に取り組んでいます」「医療費助成等子育て支援が充実しています」-。多久市の定住補助制度を説明するパンフレットには、子育て世帯にとって魅力的なキャッチフレーズが並ぶ。「子どもを持つ若い夫婦がターゲット」と市の担当者。

■やれること何でも

 多久市は15年4月、県がまとめた推計人口で市制後初めて2万人を下回った。空き家は、市の調査で12年度614件から本年度は762件と、月2件のペースで増え続けている。

 底が見えない人口減少。市幹部は「やれることは何でもやる」と危機感をにじませる。県内自治体の中では早い段階に、市外からの定住を促す手厚い補助制度創設にまい進してきた。

 住宅を新たに取得した世帯に奨励金を支給する制度を07年度導入したのを皮切りに、11年度は新婚世帯向けに家賃補助などを新設、15年度には三世代同居を進めるため家屋の増改築や空き家のリフォーム補助制度を整えた。「メニュー数で言えば、県内自治体では最多のはず」(市総合政策課)。

■15歳未満を増やす

 市は2年おきの制度見直しと、補助利用者分析を進める中で、定住促進のためには15歳未満の「年少人口」増加が鍵を握るとみる。最初の定住奨励金を15年度から「子育て・若者世代」に特化し、さらに本年度は「移住子育て世帯家賃補助金」を追加した。子どものいる世帯が市外から移住することで最長48カ月、一定の家賃を補助する。

 この春、夫と7歳、4歳の子どもと一緒に移住してきた40代女性。結婚以来、佐賀市の賃貸マンションに住んでいたが、子どもが成長するに従い家計がかさみ、部屋も手狭になっていた。「子育て世帯への厚い補助が多久に住むのを後押ししてくれた。家計の負担軽減は計り知れない」。

 ただ、女性は「移住して気付いたのは、多久には小児科がなく、子どもが病気したら佐賀市のかかりつけ医に連れていくしかない」と指摘、子どもの医療福祉と連動した施策の必要性も訴えた。

 各定住補助制度の申請者数は07年度の49件から16年度は111件と倍増。補助を受けた延べ人数は2千人を超える。着実な成果に市は自信を深め、本年度当初予算で定住促進関連は前年度から600万円増の2900万円を組んだ。

 今年4月の住民基本台帳は1万9813人。前年同期比で250人近く減少した。65歳以上の高齢化率は33%を超え、出生数より死亡数が上回る自然減が収まる様子は見えない。基幹産業がない市内での就職は難しく、若年層の市外流出対策が欠かせない。

=創生・再生 2017多久市長選(上)=

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