災害時の避難所に指定されている全国の公立学校のうち、断水でも使えるトイレや停電時の電力確保の備えをしているのは約50%にとどまることが29日、文部科学省の調査で分かった。耐震性の貯水槽などがあり飲料水が確保できるのは66%、非常用物資の備蓄をしているのは72%、防災無線などの通信手段を確保しているのは77%だった。

 文科省は、災害対応型のトイレや自家発電設備などの導入にかかる費用の一部を市町村に補助する制度を設けている。調査を踏まえ、学校の災害対応機能を一層強化するよう要請する方針だ。

 同省の有識者委員会が昨年7月、熊本地震の経験を踏まえてトイレや電源の確保を求める緊急提言をまとめた。これを受け、避難所に指定されている小中高校と特別支援学校の計約3万校を対象に、4月1日時点で調査した。

 断水時でも使えるトイレは、下水道のマンホールに置いて使うマンホールトイレや、プールの水などを洗浄に使えるもの、簡易型、携帯型のものなど。あらかじめ改修や備蓄をしている学校は50%だった。対応済みの学校の割合は佐賀は10・6%。東京、神奈川は90%を超えているが、秋田、島根、長崎は10%未満だった。

■電力確保は53%

 自家発電設備の用意などで電力確保の備えをしているのは53%。都道府県別の割合は宮城の91%が最も高く、鹿児島の9%が最も低かった。佐賀は17・2%。

 お年寄りや車いす利用者ら、避難に手助けが必要な人の利用が想定される学校で、体育館や校舎の段差をスロープなどで解消しているのは約60%だった。

=トイレ確保で地域差=

 文部科学省が実施した学校の避難所機能の調査では、地域によって非常用トイレの確保率に大きな差がある現状が浮かんだ。文科省は近年注目されているマンホールトイレなどの導入を補助する仕組みを設けており「有効に使って対応を進めてほしい」と訴える。下水道整備が進んでいない地域では浄化槽を耐震化するなど、地域事情に合った対策も求められる。

 過去の震災では、断水で避難所のトイレが流せず、衛生面で大きな問題になった例が相次いだ。熊本市によると、昨年4月の熊本地震ではマンホールに直接汚物を流せるトイレが役に立ったため、設置に備え下水道管の改修箇所を大幅に増やす方針という。

 横浜市も、携帯トイレや組み立て式簡易トイレの配備に加え、マンホールトイレの普及に力を入れる。これまでに公立小中学校を中心とする避難所459カ所のうち174カ所で設置準備を済ませており、全避難所に広げる予定だ。担当者は「トイレが使えないため水を飲むのを我慢したという避難者もおり、重要性は高い」と力を込める。

 長崎市は簡易トイレなどを市中心部でまとめて保管し、被災時に各避難所に届ける体制をとっているため、学校での確保率は低い数字になったのではないかと説明。マンホールトイレの整備は今後の検討課題という。

 徳島大の中野晋環境防災研究センター長は「下水道が普及していない地域では、浄化槽の耐震化を進め、プールの水を常にためておくことが有効だ」と話す。一方、横浜のような人口密集地域では、学校の設備をどれほど整えても膨大な数の避難者に対応しきれないと指摘。「家庭や企業でも簡易トイレを備えるなどの対策を進めることが重要だ」と強調する。【共同】

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