佐賀県の山口祥義知事は再稼働の時期が近づく九州電力の玄海原子力発電所について、専門家らで構成する第三者委員会を設置する考えを示した。そこでの意見が地元同意の判断の参考になる。組織の位置づけや顔ぶれなど検討に入っているが、原発の安全性や避難計画の課題などを多角的に検証する委員会をつくってほしい。

 地元の理解があっての原発だが、一度動き出せば、電力会社のペースで進み、地元の要請で運転が止まることは難しい。7月の鹿児島県知事選で「脱原発」を掲げて現職を破った三反園訓知事が、熊本地震後の安全点検を理由に川内原発の一時停止を求めた。九電は即時停止は拒み、10月の定期検査の中で特別点検を行う“代案”で乗り切ろうとしている。

 知事には原発運転に関与する法的権限はない。電力会社と地元が結ぶ安全協定も円滑な運営を保障するための紳士協定にすぎないとされる。そういう意味でも福島第1原発事故後につくられた新規制基準での再稼働前が、第三者委員会が問題点を指摘できる一番効果的なタイミングだ。

 地元が懸念するのは原発そのものの安全性だろう。ただ、技術的な問題については原子力規制委員会の専門家たちが長時間かけて議論している。第三者委員会が規制委の報告書をなぞるような審議をすれば、結果的にお墨付きを与える議論になりかねない。

 「3・11」の教訓は原発の安全性に絶対はなく、過酷事故は起こりうるということだったはず。避難計画の実効性を丁寧に検証してほしい。規制委はノータッチで、安全審査を合格した原発でも避難計画の課題は解決できていない。

 第三者委員会の人選も重要だ。国内で最も原発が多い福井県には「県原子力安全専門委員会」があり、顔ぶれをみるとほとんどが大学の理工系の研究者たちだ。愛媛県は「伊方原発環境安全管理委員会」を設置し、大学関係者のほか、周辺自治体や農協、医師会、薬剤師会の関係者らが名を連ねる。佐賀県も愛媛県などを参考に多様な意見が出るような委員会をつくってほしい。

 原発事故で即時避難が必要な5キロ圏の住民は、先に稼働した川内原発よりも玄海原発の方が多い。しかも呼子などの観光地も含まれ、近くには七つの離島がある。避難時は唐津市中心部の大渋滞が予想され、スムーズに避難誘導することは難解な連立方程式を解くようなものだろう。

 学校の児童生徒、病院や高齢者施設の入所者のための避難計画や訓練も十分と言えない。甲状腺被ばくを防ぐための安定ヨウ素剤の配布も5キロ圏で十分なのか、迅速な避難のために30キロ圏すべてに事前配布しなくていいのか。第三者委員会には実際に現場を見て判断してほしい。

 原発は国策であり、佐賀県政では聖域扱いで、これまで第三者委員会を設置することさえなかった。しかし、「3・11」以降、求められているのは県民を守るための自主的な判断であるはずだ。

 山口知事は就任以来、「佐賀のことは佐賀で決める」と繰り返す。原発の安全性は30キロ圏の伊万里市長が疑問を呈しているように県民の不安が払拭(ふっしょく)されたと言えない。多様な意見をもとに慎重な判断を求めたい。(日高勉)

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