「人類は小さな球の上で/眠り起きそして働き/ときどき火星に仲間を欲しがったりする」-。詩人の谷川俊太郎さんのデビュー作『二十億光年の孤独』の一節である。この夏は、天文ファンやSFファンをわかせるニュースが相次いだ◆ロシアの電波望遠鏡が、地球から約95光年離れた恒星からの強い信号をとらえたと、海外の通信社などが伝えた。人類と同等か、それ以上の文明の可能性があるという見方まであり、地球外生命体発見の期待が高まった◆もうひとつは先月上旬、欧州合同原子核研究所(CERN)が、未知の素粒子を発見かのニュース。“神の素粒子”ヒッグス粒子を見つけたCERNとあって「4次元が存在する証拠か」との臆測も飛び、「時間旅行につながるかも」とわくわくさせられた◆が、結局いずれも「地球由来の電波」「統計上のゆらぎ」といった具合で空振りに。冒頭の詩は1950年の作で、この夏、書店に並んだ新装版の文庫は、谷川少年がきちょうめんに書きつけたノートの写真も収録している◆詩は、火星人も「ときどき地球に仲間を欲しがったりする」と続く。「宇宙はどんどん膨んでゆく/それ故みんなは不安である」「二十億光年の孤独に/僕は思わずくしゃみをした」。漆黒の宇宙に胸躍らせる若者の感性は、いつの時代も変わりはしない。(史)

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