「農林水産業骨太方針策定PT」の会合であいさつする自民党の小泉進次郎農林部会長(中央)=6日午後、東京・永田町の党本部

 環太平洋連携協定(TPP)発効を見据えた農業改革の攻防が再び始まった。全国農業協同組合連合会(JA全農)が農家に販売する生産資材の値下げが焦点だ。自民党の急先鋒(せんぽう)、小泉進次郎農林部会長は全農の組織見直しをちらつかせて圧力を強め、自己改革案を小出しに示すJA側は守勢に立たされている。1面参照 

 「日本の農業にプラスなら、その選択肢は全く排除されない」。小泉氏は8月25日の講演で全農を改革に後ろ向きだと批判、現在の協同組合から株式会社への移行という選択肢を突き付けた。

■包囲網

 昨年の改革でJAは、グループを統括する全国農業協同組合中央会(JA全中)が抵抗した末に会長が辞任し、権限を縮小された。組織に外部から手を突っ込まれた苦い記憶がまだ生々しい中で、商社機能を担う全農を次の標的として小泉氏は名指しして見せた。

 呼び水となったのは、その約1カ月前にJAグループ首脳らが行った共同記者会見だった。自己改革に取り組む姿勢をアピールする場のはずが、全農の中野吉實会長は「今までも良い形で運営してきた。2年先も3年先も同じかもしれない」と発言。奥野長衛新会長の下で改革に協力姿勢を示すようになった全中との温度差が浮かび上がった。

 農林水産省では今年6月の幹部人事で折り紙付きの改革派官僚、奥原正明氏が事務次官に昇格。菅義偉官房長官は6日の記者会見で農業改革を「全面的に支援する」と加勢する意向を示し、政府も含めたJA包囲網が出来上がりつつある。

■ガラパゴス

 「がくぜんとした。韓国の稲作に負ける」。6日に再開された自民党の農業改革を議論する会合で、日本農業法人協会が資材価格の調査結果を披露。日本の肥料や農薬は韓国より2~3倍高いとの説明に対し、会場内に波紋が広がった。

 同席した全中の奥野会長は日本の農業を「ガラパゴス」になぞらえ、海外との競争に備え、世界標準に近づく必要性を認めた。全農の神出元一専務もコスト削減に向け「肥料の銘柄を集約する」と約束した。

 全農もただ手をこまねいているわけではない。8月には韓国製の割安な肥料を大規模農家に販売すると発表。開発費を抑えた割安なジェネリック農薬(後発薬)を追加開発する方針も打ち出した。だが、こうした自己改革には、政府・自民党による急進的な改革圧力をかわす思惑があると見られている。

■同床異夢

 改革を前進させるてこ役を期待されたTPPは揺れている。発効の鍵を握る米国で、大統領選候補の民主党クリントン氏、共和党トランプ氏がそろって反対姿勢を表明。安倍晋三首相は「保護主義の誘惑を断ち切るのが政治の責任」と参加各国に早期承認を求めているが、発効の見通しが立たないのが実情だ。

 自民党内も一枚岩ではない。「組織の形を考えることが自己改革ではないか」と主張する小泉氏に対し「民間の話に口を出すべきではない」(農林族)と、JAの自己改革に一定の理解を示す声もある。

 小泉氏は「山登りは(高く)登るほど空気も薄くなる。途中でいろいろなことがあるかもしれない」と述べ、今後の展開に気を緩めていない。改革が具体化すればJA側との同床異夢があらわとなり、対立が先鋭化する局面も出てきそうだ。【共同】

=表層深層=

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