■主従から対等へ自立模索

 日本国憲法は第8章「地方自治」で、地方自治体が住民の意思に基づいて政治を行うことを保障しているが、住民が望む暮らしと政府が主張する「国益」が一致しない場合がある。佐賀県でも自衛隊オスプレイ配備計画や原発の問題など、賛否が割れる難題に直面している。佐賀市で昨年秋に講演した広島市立大学の河上暁弘准教授(44)=憲法学=に、憲法と地方自治の関係や国策の捉え方を聞いた。

 <地方自治は旧憲法になかった新しい規定で、5月3日は地方自治法の施行から70年の節目でもあった>

 「現憲法には、国家による過去の失敗を繰り返さないようにする目的があり、権力の過度な集中が無謀な戦争につながったことを教訓に、権力を分立させた。地方自治は三権分立(立法、行政、司法)と同様の理念に基づき、書き込まれたと考えることもできます」

 「もう一つ、新たに加わったのが2章(9条)の『戦争の放棄』です。戦争遂行には中央集権が不可欠ですが、地方自治はそれを防ぐという意味で、二つの章は一体のものです」

 <中央集権から地方分権へ-。こうした流れは、戦後の復興期から高度経済成長を経て、成熟社会を迎える時代の要請でもあった。地方の存在感や発言力が高まることで、国との対立が目立つようにもなる。象徴的なのは、戦後も米軍の統治下にあったため、日本国憲法が適用されて45年しかたっていない沖縄県だ>

 「沖縄には今も在日米軍施設の74%が集中しています。この状況が一向に改善されないため、『沖縄のことは沖縄で決める』という声が年々大きくなり、米軍普天間飛行場の辺野古移設を巡っては、安倍政権と真っ向から対立している」

 「『外交と安全保障は国の専権事項』ともいわれますが、私は必ずしもそうは思いません。地域住民の安全を守る責務は、一義的には自治体が負うべきだと考えます。『国益』を守ろうとする政府の姿勢が、住民の安全を守るというより、脅かす可能性もあることは、沖縄の人は歴史の教訓としても知っている。佐賀の人も国防の事だからと思考停止に陥らないでほしい」

 <国と地方の関係が『上下』『主従』から『対等』『協力』に変わることで、『国益』を唱えれば地方がそのまま従う時代ではなくなってきている。従来型の国づくりからの自立が地方に求められていると、河上さんは考えている>

 「国は基地や原発などの施設を受け入れる地域に対して、経済的な見返りを与えるような手法で、これまで国策を遂行してきました。しかし、沖縄や福島第1原発事故後の原発立地地域では、基地や原発に頼らず、経済的に自立しようと模索する動きが目立ってきているように思えます」

 「国会の憲法審査会で今、『国と地方のあり方』が論議されています。地方自治をどう規定し直すかが話し合われている。私たちが暮らす地域の将来に関わることなので、関心を寄せてほしいですね」

 かわかみ・あきひろ 1972年生まれ。中央大学法学部卒。専修大大学院博士課程修了。広島市立大広島平和研究所講師などを経て2014年から現職。専門は憲法学、地方自治論。富山県出身。

このエントリーをはてなブックマークに追加