佐賀交響楽団理事長 吉原 敏郎

■戦争語り継ぐ役割担う

 8月の紙面は、小池百合子都知事誕生と元横綱千代の富士関の死去のニュースから始まった。今年の夏は異例の暑さで、全国版ニュースでも高温都市に佐賀が何度も名を連ねて有名になってしまった。

 毎年のことではあるが、8月は鎮魂と反省と平和への誓いの月である。それに今年は天皇の生前退位やリオデジャネイロ五輪が加わり、紙面は実に充実していた。

 戦後生まれの団塊の世代も高齢者の域に達してきた。先の大戦を生き抜いた父や母、祖父や祖母から直接話を聞き、受け継いだ戦争の惨(むご)さ、悲しさ、虚(むな)しさをさらに次の世代へ伝える重要な役割を担うはずだが、その父や母が元気な頃は団塊の世代はちょうど働き盛り。ゆっくり耳を傾け、語り合う時間も取れなかった。なぜ、もっと真剣に、真摯(しんし)に話を聞いていなかったのか悔やまれてならない。

 今、その語り継ぎの役を紙面が担っている。11日から始まった「佐賀の戦後71年『記憶を訪ねて』」のシリーズは圧巻であった。71年の時を経て、風化が進む体験談を聞き取り、紙面に残し、読者の記憶の中に生き続けさせるこの一連の流れは、映像ドキュメントの一過性の衝撃とは異なり、醸成された真実がゆっくりと受け継がれていく。

 戦争と天皇制は切っても切れない関係にある。7月から皇位継承の記事が目立ち始め、8月は実に繚乱(りょうらん)であった。国民の象徴としての天皇の在り方は、濃淡の差はあっても全ての国民・県民の一大関心事であろう。その観点から、シリーズ「天皇退位論点を聞く」は、素人が感情論に走りやすい生前退位について問題点や法的根拠を識者が丁寧に論じていて分かりやすかった。また、緊急世論調査結果の公表も時宜を得ていた。85・7%の人が「できるようにした方がよい」と容認している。

 興味があったのは、この問題についての学生たちの意見の掲載である(9日付)。冷静に問題点や危険性を指摘している。これからの皇室と歩むのはこの若者たちである。実に頼もしく感じた。生前退位や皇位継承には憲法や皇室典範の縛りがあるが、これらにどう向かい合うかは主権者である国民と国会が決めることである。引き続き、きめ細かな報道を期待したい。

 スポーツを楽しむ人は、観(み)て楽しむタイプとプレーして楽しむタイプがいるらしい。リオ五輪はその全ての人を興奮させた。連日、オリンピックの記事で埋めつくされた。この盛り上がりは4年後に行われる東京五輪の直前の大会ということもあり、選手もコーチ陣も応援団も一般国民も大いに燃えたと思う。

 一方、国内では、甲子園で全国高校野球大会、全国高校総体、プロ野球、Jリーグなどの熱戦が繰り広げられていた。テレビでは放映される時間が少なかったが、紙面では県内選手の活躍を含め、細かく報じ、声援を送っていて、地元紙としての面目を果たしていた。

 季節は巡って、もう秋となった。相変わらずうれしい記事の半面、戦慄(せんりつ)するニュースも多い。穏やかな秋であってほしいと願っている。=8月分=(よしはら・としろう、佐賀市)

このエントリーをはてなブックマークに追加