北朝鮮が日本海に向けてミサイル4発を発射した。そのうち、3発は日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下しており、日本にとって脅威の度合いが増している。

 かねてから懸念されていた通り、北朝鮮が新たな挑発行為に踏み切った。今月から米韓による大規模な合同軍事演習が開かれており、その対抗措置とみられる。

 今回の米韓軍事演習で注目すべきは、過去最大規模の戦力が投入されている上、朝鮮半島有事を想定して、北朝鮮への侵攻シナリオまで含まれている点である。

 北朝鮮の狙いはどこにあるのか。

 先日、安倍晋三首相が訪米した日米首脳会談のタイミングでも、北朝鮮はミサイルを発射しており、トランプ政権の出方をうかがっているという見方ができる。

 これまで北朝鮮は弾道ミサイル開発とともに、核実験を繰り返してきた。小型化した核兵器と、弾道ミサイルが結びつけば、その脅威は周辺国だけにとどまらない。米国にしてみれば、万一に備えて先制攻撃まで視野に入れるのは当たり前だろう。米国議会からの働きかけを受けて、トランプ政権は「テロ支援国家」への再指定の検討に入ってもいる。

 もうひとつ、今回のミサイル発射を読み解く上で考えておかねばならないのは、マレーシアを舞台にした金正恩(キムジョンウン)委員長の異母兄、金正男(キムジョンナム)氏殺害事件である。猛毒の神経剤VXを公共の場で使い、各国から非難を浴びている。それに対する抗議のアピールともとれそうだ。

 正男氏殺害は、単なる北朝鮮の国内問題にとどまらない。周辺国のパワーバランスに影響を与えつつある。

 殺害現場になったマレーシアは北朝鮮大使を国外追放し、ビザ(査証)なしで認めてきた渡航を見直した。実行犯の女がインドネシア国籍だったことから「自国民を巻き込んだ」とインドネシアも強く非難しており、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国からも懸念の声が相次ぐ。

 鍵を握るのは、中国の対応だろう。1日に中国の王毅外相が、訪中した北朝鮮の外務次官と会談したばかりでもあり、その直後のミサイル発射は面白いはずがない。

 中国は、国会に当たる全国人民代表大会(全人代)のさなかだ。習近平国家主席にとっては、将来の長期政権の布石を打つ重要な意味を持ち、思惑通りに進めば「あと10年」の長期政権が実現する。

 それにもかかわらず、習氏が就任して以来、北朝鮮との間でトップ会談は実現していない。北朝鮮の“後見人”を担ってきた姿勢が変わりつつあるのだろう。

 日本としては、今回の落下地点が排他的経済水域内だったという点は見過ごせない。このエリアでは、操業している漁船がミサイルに巻き込まれていてもおかしくないからだ。日本国民の命が危険にさらされているのだと、深刻に受け止めなければならない。

 米韓合同軍事演習は来月30日まで続く。北朝鮮がさらなる挑発行為に打って出る可能性もある。日本にとって最大の懸案の拉致問題の解決は糸口さえ見えていない。孤立を深める北朝鮮に対して、日本は米韓をはじめとする関係国との連携を深めつつ、圧力を強めていくしかない。(古賀史生)

このエントリーをはてなブックマークに追加