何事もパイオニアというのは苦労がついてまわる。佐賀広域消防局で初の女性消防士として採用された迎香奈江(むかえかなえ)さん(30)=佐賀市=もそうだった◆今では考えられないが、当初、制服の支給はスカートのみだった。予防指導の仕事で脚立に乗ったり、建設現場へ入らなければならず、たまらずズボンを要望した。「女性は事務」という周囲が持つ印象を払拭(ふっしょく)するのは大変だという◆幼いころから「かっこいい」と憧れた消防士。2007年に採用され、救急隊などを経て、今は小城消防署で消防車の運転手を務めている。火災現場は過酷で悲惨。消火した後も、家の人の泣き叫ぶ声や、焼死体の臭いがずっと耳や記憶に残ることもある◆それでも出火先の人からお礼の手紙が届いたり、日常生活を取り戻した姿を見せに自ら署に足を運んでもらえることが何よりの励みになる。もちろんまだ課題もあり、消防士に占める女性の割合は全国で2・5%。警察や自衛隊よりかなり低い。県内では13人を数えるが、結婚出産を機にやむを得ず退職する人もいて、復職や子育て支援が望まれる◆現場にこだわる迎さんの目標は緊急消防援助隊や水難救助隊での活躍。「女性活躍推進といった言葉がなくなる社会こそが本当の男女平等。そこへの道をつくりたい」との夢を描く。きょうは「消防記念日」。(章)

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