肥前吉田焼作家、辻さんの新作「雲」

■地域に生まれ暮らす喜び

 台風の後には深まろうとする秋が残されるのだろうか。佐賀を遠く去り、寮生活する長女の穴からひんやりと静かな風と音が流れてくる。

 今年4月、嬉野の町おこしプロジェクトに呼ばれ、その人々に惹(ひ)かれ、通うようになった。先月は「うれしの晩夏」という土地に長く営まれている温泉、茶、焼き物に光を当てた催しがあった。そのラストを飾る「嬉野晩餐(ばんさん)会」に席を作っていただいた。

 嬉野出身・福岡「木島」の寿司(すし)、肥前吉田焼作家「辻諭」の器、嬉野茶師「松尾俊一」の茶。どれにも瞠目(どうもく)した。気鋭の感性を持つ小原嘉元さん率いる和多屋別荘「洗心の間」は、障子を通された光の陰影がフェルメールのそれのように満たされていた。

 今ここに世界中の誰を招いても和の心と技に感嘆せざるを得ない内容と言ってもよかった。地域が東京でなく、その土地に向き始めている、それも深く。今ここに生まれ、生きている喜びをそろそろ真っ当に思い出す時代が来ているのかもしれない。(養鶏農家)

このエントリーをはてなブックマークに追加