唐津市の坂井俊之市長(55)が来年1月の市長選に出馬しない意向を市議会で表明した。側近の市幹部が逮捕される汚職事件が続いた上に、自らも政治資金規正法違反の可能性がある「迂回(うかい)献金」問題が発覚した。市政不信の声が2年近くやまない中、出馬をあきらめざるを得ない状況に追い込まれた形となった。

 坂井市政は旧市時代の2003年にスタートし、9市町村による「平成の大合併」をまとめた点は評価できるだろう。しかし、13年間を超える任期中、07年と14年に、市幹部が入札情報の提供の見返りに業者から現金を受け取った罪で逮捕された。1度ならず2度も、幹部職員が汚職事件に関与した自治体は近年、県内では聞かない。

 コンプライアンス(法令順守)への姿勢で組織に問題があったと言わざるを得ない。市長を支えてきた保利耕輔元衆院議員の後援会関係者からも「次はあり得ない」という声は出ていた。

 決定的だったのは翌15年秋に発覚した市長自身の「迂回献金」問題だろう。県議時代(1999~2003年)につくった自民党の政党支部を、市長に当選した後も企業団体献金の受け皿に使い続け、政治資金規正法違反の疑いがもたれた。

 市民団体の告発を受けた佐賀県警や地検の捜査は今も続き、結論は出ていないが、市民2672人の署名で設置された政治倫理審査会は迂回献金問題について明確に「政治倫理基準違反」と判断を下した。これが出馬の可能性を探り続けた市長にとって重くのしかかった。

 県内には政治倫理条例を持つ自治体が、事件後に制定した唐津を含めて4市あるが、市民が市長を“裁く”政倫審が開かれたのは初めてのケースだ。市民の政治チェックシステムが機能した点では評価できる。

 とはいえ、坂井市長の出馬断念で汚職の土壌が改善すると考えるのは楽観的すぎる。これを機に、問題の本質を見つめたい。

 一連の市政不信のきっかけとなった2014年の公共事業の不正入札事件で浮かび上がったのは、選挙の支援を通じ、市長との距離を縮め、発言力を得る業者の姿だった。

 前回の選挙で坂井市長陣営には「企業後援会」という別動隊が業者主導で発足し、企業の票をとりまとめた。会員企業は市長選後、ゴルフコンペなどを通じ、市幹部と接点を持った。入札情報を不正に入手して逮捕された業者はこのメンバーだった。

 クリーンな選挙が政治の出発点にならなければ、行政と企業の不適切な関係をなくしていくことは難しい。

 そういう意味で、4カ月後に迫る来年1月29日投開票の市長選はさらに重要性を増す。現在は、前回立候補した元自民党県議の峰達郎氏(56)が再挑戦を表明しているだけだ。出馬を断念した坂井氏の支持者たちが新たな候補を担ぎ出すか否か注目される。

 どのような構図になるにせよ、企業に依存した動員型の選挙を従来通りに繰り返すようなら、汚職の土壌は温存される。決別するには、有権者が公正な1票を投じて政治風土を変えていくしかない。(日高勉)

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