鹿児島県の三反園訓知事が川内原発(薩摩川内市)の即時一時停止の要請を断念した。難しいと承知の上で「停止圧力」をかけ続けた結果、九州電力から安全対策の支援拡充など「実利」を得て妥協した形だ。九電は三反園知事がひとまず矛を収めて安心するが、10月以降の定期検査後に知事が運転再開を了承するか不透明だ。

 「非常に感謝している」。9日県庁で九電の瓜生道明社長から回答書を受け取った三反園知事は、即時停止の拒否に「極めて残念」としながらも、九電が新たに示した安全対策を評価した。「特別点検」の前倒し実施や避難車両の充実、避難道路の整備など多岐にわたる。「安全安心は前進した」と記者団に繰り返し強調した。

 元々知事に原発を止める法的権限はない。それでも即時停止の要請を突き付けてきたのは「九電から少しでも協力を取り付ける戦略だったのでは」(九電関係者)との見方がある。

 原発立地の地元首長と良好な関係を築きたい九電なら即時停止は拒否するものの、他の支援は引き出せる-。堂々巡りに見えた今回の騒動も、三反園知事は最初から着地点を考えていた可能性がある。

 ただ、即時停止要請を諦めたことで、7月の知事選で支持を取り付けた反原発団体などから突き上げも受けそうだ。薩摩川内市の市民団体代表の北畠清仁さん(68)は「どれだけ時間がかかっても気迫を持って原発を止めてほしかった」と強い口調で話した。

 九電は「一区切りつきそうだ」(幹部)と胸をなで下ろしている。他電力の原発再稼働にも影響を与えかねない即時停止は決して譲れない一線だった。当面は特別点検と定期検査に全力を挙げ、安全性を再確認する。

 しかし、九電にとって新たな関門が浮上した。三反園知事は定期検査後、有識者らによる検討委員会の見解を待って運転再開を了承するか最終判断をする考えを示した。法的には運転再開に知事の了承は不要だが、意向に逆らい再開すれば、決定的な溝をつくりかねない。三反園知事と九電の緊張関係は続く。【共同】

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