10日の「世界自殺予防デー」にちなみ、今週は「自殺予防週間」に当たる。誰もが自殺に追い込まれない社会をどう実現していくか、この機会に考えておきたい。

 日本の自殺者は2011年まで14年連続で毎年3万人を超えていたが、ここ4年は2万5千人前後と減少傾向が続く。県内でも似た傾向で、毎年200人を超えていたのが、昨年は157人にとどまった。

 自殺者が減った背景には、自殺対策基本法施行から10年を迎え、この間に打ち出した対策が効果を上げてきたのが大きい。

 だが、減ったとは言っても、あくまでも3万人台が続いた時期に比べてという意味であり、いまだに年間2万5千人近くが自ら命を絶つ社会は健全とは言えない。

 先週、衝撃的な調査結果が公表された。日本財団が「過去に本気で自殺したいと思ったことがある」という人が4人に1人に上る、という実態を明らかにした。20歳以上の男女4万人を対象にした初めての大規模な調査で、若年層や女性ほど自殺リスクが高いという傾向が浮き彫りになった。

 私たちの社会は依然として、深刻な自殺リスクを抱えている。

 佐賀県の場合は、人口10万人当たりの自殺者数「自殺死亡率」を都道府県別で比較すると、全国40位と低い水準にある。原因・動機は「健康問題」が最も多く、「経済問題」「家族問題」が続く。

 健康問題に着目すると、県内では医療機関が自殺予防で連携する体制が整えられている。自殺を図った人は心理的に追い詰められて、うつ病やアルコール依存症などの精神疾患を発症しているケースが多い。そこで、不眠などを訴える患者を、かかりつけ医が精神科医へ紹介する体制がとられている。

 体調の異変から自殺の兆しをキャッチしようとする試みで、昨年はかかりつけ医から精神科医へ2千件を超える紹介があった。

 経済問題への対策も欠かせない。倒産や失業、多重債務などの問題を抱え、経済的な困窮から抜け出せずに、死を選ぶケースが少なくないからだ。いかに経済的に立て直していくか、就労支援や家計支援などの目に見える対策が自殺防止の第一歩になる。

 それぞれの原因を取り除く対策を地道に重ねていくしかないが、自殺者数の減少に伴って、原因を特定できないケースが増えてきた。県内のデータを分析すると「その他・不詳」の割合が急増しているのに気づく。先日開かれた県自殺対策協議会でも、この点を挙げて「もっと踏み込んで原因をつかまなければ、対策を打てない」という指摘が有識者から出ていた。

 いかに本人が発するSOSを、周囲がキャッチし、各支援団体につなげるか-。佐賀県は新たな対策拠点「地域自殺対策推進センター」を設置する検討に入った。支援相談体制をさらに充実させ、専門指導員を育てていく方針だ。

 日本財団の調査によると、自殺未遂者は過去1年以内に限っても、53万人を超える。私たちの身近にも、つらい思いをしている人がいるはずだ。原因不明の自殺が増えている背景には、人間関係の希薄さがある。「大丈夫?」と声をかけ合い、孤立を放置しない社会でありたい。(古賀史生)

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