ギターの表には振動の伝達が速く音の響きが残らない針葉樹を使い、裏にはその逆の広葉樹を使う。

 工場の質を上回るギターが作りたかった。

 ギター製造会社を辞める前に自宅の車庫を改良して工房を作り、会社から帰った後や休日に自分のギター作りに没頭した。工場には製作に必要な道具や大がかりな機械がそろっている。しかし、自宅の工房にはない。ギターを作る以前に、ギターを作るための道具から手作りする必要があった。この経験が、工場にあるものを使うのが当たり前だった合瀬さんに新しい価値観を与える。

 手作りの工程がどんどん増え、道具も作業の順番も変化していった。工場では会社の系統の音がするギターしか作ることができなかったが、突然それとは異なる自分だけのギターができた。製作を続ける中で、“作り方”に重要性を見いだした。

 たとえ数百万円するビンテージギターと同じ材料を使っても、作り方次第で全然違うものになる。例えば、木材を接着する工程で、手で押さえるのか器具で圧力をかけるのか、木を削ってから接着するのか、その前に削るのか-無限にある製作過程での可能性は、自分で想像するしかない。

 オーダーメードで作るため、注文を受ける時は「どのようなギターにしたいか」、音のイメージを共有することも求められる。細かい指示を与えてくれるアーティストもいれば、「バシャーンという感じで」と抽象的に依頼されることもある。いずれにせよ、最初から自分の好みの音は言わない。「自分の意見に相手が引っ張られないように」。答え合わせをするように、相手から完成したギターの感想をもらって次に生かすこともある。

 自分の作ったギターを有名アーティストが使っているのを見ると、うれしさはもちろんだが不安にもなると言う。すべて手作りのため、演奏中に壊れでもしたら自分の責任になる。「弦が切れても自分のせいではないかと思う」と冗談交じりに笑いながら、作って終わりではない責任の重さをのぞかせた。

ギターの表には振動の伝達が速く音の響きが残らない針葉樹を使い、裏にはその逆の広葉樹を使う。

1.Visitor.007 合瀬潤一郎(ギタークラフトマン)

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