補修工事をしたクリーク=神埼市千代田町

 佐賀平野を縦横に巡るクリークの補修工事が進められている。クリークの貯留機能は農業に必要な水の供給だけでなく、洪水調整などにも大きく寄与している。世界的にみても貴重な農地・水利用ステムであり、適切な管理で次代に引き継いでいきたい。

 佐賀県はコメ、麦、大豆などの生産が盛んで、耕地面積に対する作付面積を表す耕地利用率は約130%と全国一を誇っている。この農地、水を保つのに、クリークは大きな役割を果たしている。

 九州農政局筑後川下流右岸農地防災事業所によると、佐賀平野のクリークの総延長は約1300キロ(市街地や集落内を除く)。クリーク全体の農業用水の貯留量は約980万立方メートル、洪水調節容量は約1200万立方メートルで、合わせると北山ダム(佐賀市)の貯水量に匹敵するという。

 佐賀平野特有の重要な「水がめ」だが、多くは護岸工事を施していない粘土質の土による水路のため、豪雨や干ばつなどの影響を受けて、のり面の崩壊が進んでいる。のり面崩壊は土砂の堆積、農地の湛水(たんすい)被害につながり、隣接する道路の崩壊や周辺地域の湛水などを招く恐れもある。放置すれば農業の生産活動だけではなく、住民の生活にも影響してくる。

 同事務所は2013年度から本格的に補修工事を始め、23年度までに南北に通る「縦幹線」約170キロを補修・整備する計画だ。崩壊や土砂が堆積したクリークを対象に、地盤改良や掘削、盛り土を施し、環境負荷が小さい「ブロックマット」でのり面を覆う。これまでに30キロ程度が終わった段階で、長期間の取り組みになる。

 佐賀県も12年度から10年計画で、東西の支線を中心にクリーク補修を進めている。全体で約580キロを補修する予定で、コンクリート工事よりもコストを抑えられる「木柵工法」を採用。間伐材を使うことにより、森林保全にも役立てる狙いがある。

 クリーク補修は国や県が進めているが、普段の管理や清掃などの保全活動は地域住民が担っている。農業と暮らしの営みの中で、クリークと共生した地域社会が築かれており、これからも長く守っていきたい佐賀の「文化遺産」でもある。

 佐賀新聞「ろんだん佐賀」(1月31日付)で、木村務氏(長崎県立大元副学長)は「壮大な地域システム」とクリーク農業を高く評価し、国連食糧農業機関(FAO)が認定する「世界農業遺産」への登録を期待した。クリークにはそれだけの価値があり、子どもたちの学習会や維持管理体制づくりに向けた地域住民のワークショップなども開かれている。価値の共有を図りながら、有効に機能する状態を保っていきたい。(大隈知彦)

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