「カセイタ」という不思議な響きの菓子がある。「加勢以多」と書く。上品な味わいの熊本銘菓で、どこか文化的な薫りが漂う◆それもそのはず、千利休門下の優れた茶人「七哲(しちてつ)」の一人とたたえられた、熊本城主・細川三斎(さんさい)(忠興)が茶席に取り入れたと伝わる。ヨーロッパから渡来した果実マルメロのジャムを固め、軽いウエハースで挟む。現在はマルメロではなく、カリンで代用しているようだが、さわやかな甘みと口の中でとろける感触は、心が安らぐ◆熊本地震から5カ月が過ぎた。満身創痍(そうい)で立ち尽くす熊本城の姿は、見るたびに心が痛む。修復に必要な600億円超という莫大(ばくだい)な費用をまかなうため、熊本市は「復興城主」制度の創設を決めた。1万円以上を寄付した人の名前をデジタル画像化し、近くの観光施設に設けるスクリーンで映し出す計画で、年内にも受け付けが始まる◆肥後細川家初代当主の三斎さながらに、城主気分を味わうのも悪くない。ましてや熊本城がかつての威容を取り戻すことは、市民の目に見える復興でもある。激しい揺れに耐えた瓦を「落ちない瓦」として活用する案も出ているようだ◆カセイタは「マルメロジャムの箱」を意味するポルトガル語が語源だとか。当て字の加勢以多の由来は知らないが、復興の加勢は少しでも多いほうがいい。(史)

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