■脳機能、一時的に低下

 健康な人は毎日、どこかで冗談をとばしながら、お互い笑っている。その笑顔が職場や家庭をなごやかな雰囲気にし、お互いの人間関係を円滑にしている。

 うつ状態、あるいはうつ病に陥っている方を早期に発見できるヒントをよく尋ねられる。その答えは比較的簡単で、「笑いたくても、笑えない」病ですよと伝えると、皆さん納得される。いったん、うつに陥ると、感情をうまく表現することができなくなる。表情も硬くなり、冗談も通じない。脳機能が一時的に低下しているので、笑うという高次機能が円滑にできなくなる。つまり、笑える間はうつではないだろうと思われる。

 電話相談あるいはカウンセリングを行っている最中に、突然相談者が大泣きされることも多々みられるが、そのとき私は「ほっ」とする。泣くことができた、感情を表現することができた、悲しい今の自分を表現できたと考えると、辛い感情を表現できたことはすばらしい。たとえ笑えなくても、泣くという感情表出ができたからである。

 治療の過程で、治療効果があるかどうかの一つの指標として、冗談が通じるかどうかを見極めることが大切である。冗談が通じれば、もう半分以上は改善している。つまり、笑えるかどうかにかかる。最後に残る症状は、意欲と睡眠の問題となる。不眠は長期にわたることが多いが、薬によく反応し、社会適応に支障は生じない。意欲の改善は最後に残る症状で、これが改善しないと、朝方、出勤などの行動を開始することできず、復職が困難となる。

 誰もが日ごろ、自然に笑っているが、それはすばらしい高度な脳機能である。笑えることはあらゆる脳神経の機能を使いながら、それらの機能が調和している状態である。したがって、うつ状態・うつ病が改善していくと、顔をみただけで改善の兆しを察知することは可能であり、特に、冗談が通じて、笑顔がみられると、脳機能はかなり改善しているサインである。

 また、うつに陥らないためにも、普段から冗談をとばしながら、お互い笑える関係を維持していくことが大切だと思う。

 (佐賀大学保健管理センター長・産業医 佐藤武)

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