不正アクセスで大量の個人情報が流出した佐賀県の教育情報システム。教育現場の情報管理意識の低さが浮き彫りになった(一部画像処理をしています)

 その申請書は、毎週のように佐賀県教育委員会に届く。「日曜に学校行事があるので、校内無線LANの使用を許可してほしい」。差出人は県立の高校や中学校。6月に発覚した不正アクセス事件を受け、夜間と休日は全校の無線LANが停止している。使用する場合、許可が必要になった。

 県の教育情報システムから県立学校の生徒ら約1万4千人分の個人情報が盗み出された事件。逮捕されたのは当時17歳の少年だった。県教委は「ICT(情報通信技術)教育先進県」を掲げ、学校現場のネット活用を積極的に進めてきたが、危機管理の意識が抜け落ちていたことが露呈した。

 各校は県教委の指示で再発防止策を取った。システムに個人情報を極力残さないようにして、生徒の氏名は出席番号で表記するように変更するなどした。被害に遭った県西部の学校の校長は「使い勝手が悪くなったが、セキュリティー最優先だから仕方ない」と話す。

 県教委は、第三者委員会が10月に提言した「セキュリティー文化の確立」を目指し、実施計画書を練っている。これまで取り組んでいなかった研修や監査、情報共有の内容を具体的に列挙し、間もなく公表する。幹部職員は「失った信頼を回復するための第一歩。現場の実態に合わせて磨き上げていく」と話す。

 教員の間には、県教委の施策の進め方に加え、情報流出の責任の所在をあいまいにして「組織全体の責任」と説明している状況に対し、不満もくすぶる。

 一方で、事件には現役の高校生も関わっており、教育現場から「加害者」を出してしまった事態に責任を感じている人もいる。

 多数の被害者が出た佐賀市内の学校では事件後、情報モラルの大切さをどう教えるか、教員間で話し合っている。「生徒は、私たちの想像以上に高度な情報技術を持っている。そのことを把握していれば、防げた事件かもしれない。子どもの実態把握が足りなかった」と教頭。問われているのは、情報セキュリティーの在り方にとどまらず、生徒との向き合い方だと感じている。

=ズーム= 県教育情報システム不正侵入事件

 県警は6月、県の教育情報システムへ不正に侵入したとして、佐賀市の無職少年=当時(17)=を逮捕した。流出した21万件のファイルには、県立学校の生徒ら約1万4千人分の住所や成績などの個人情報があった。情報は少年の仲間が共有し、県立高の生徒7人が関わっていた。

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