男女とも世界屈指の平均寿命を誇る日本。ただ長生きすればよいのではなく、日常的な介護を必要とせずに自立した生活ができる生存期間「健康寿命」が重要視されるなど、寿命の質が問われている。その考え方を一歩進めて、高齢者が生きがいを持って、地域の中でいきいきと暮らせる期間を「はつらつ寿命」と命名したい。さらには、高齢者の持つ豊かな知識や経験、能力を地域づくりに生かせる社会を目指したい。

 高齢者がいきいきといつまでも暮らしていくために、生きがいづくりが必要だ。生きがいは、年齢にかかわらず主体的に活動し、自立した生活をしていくために必要な心の支え。高齢者にとっては、そのまま生きる意味にもつながる。

 しかし、多くの人にとって老境に差し掛かる50代から60代にかけては、定年退職や子育てを終える時期と重なる。60歳前後を境に、「仕事」「子育て」という、いわば二大生きがいを失うことになり、「燃え尽き症候群」や「空(から)の巣(す)症候群」など心身のバランスを崩す人もいるほどだ。

 ただ、生きがいは決して仕事や子育てだけではない。本紙読者投稿欄「ひろば」に目を通すと、ウオーキングや山登り、草花や野菜作り、孫のお守りにと、明るく前向きに日々を暮らす高齢者の姿が浮かぶ。「みんなのスポーツ」欄では、ゲートボールやグラウンドゴルフのみならず、さまざまな競技で好成績を残し、誇らしげに優勝杯を掲げる高齢者の姿も珍しくない。

 そもそも生きがいは、極めて個人的なものであり、他人が与えるものでも、強制されるものでもない。何に生きがいを感じるかは、その人の個性や人生観にも由来し、人生経験を重ねた高齢者なら、なおのこと多様となろう。高齢者も趣味的なものだけでなく、就労や起業、生涯学習、地域貢献など、さまざまな形態の生きがいを求めているとのデータもある。

 佐賀県高齢者福祉計画「さがゴールドプラン21」は、豊かな知識や経験、技能を持つ元気な高齢者を、地域社会を支える担い手として位置づける。地域活動や社会貢献活動に意欲のある高齢者のニーズに対応できる仕組みづくりや普及啓発に力を注ぐとしている。

 その一つが「ボランティアポイント制度」。老人介護施設などで入所者との語らいや生活支援などボランティア活動を行うと年間最大5千円相当のポイントがもらえる。8月末時点で876人が登録。高齢者が相互に支え合うことで、介護予防効果もあるという。

 また、「ゆめさが大学」(旧高齢者大学)では、県内3校で60~90代が学び、これまでに4千人近い卒業生を出している。そこには、老いてなお成長し続ける高齢者の姿がある。卒業生の7割が何らかの地域貢献活動に携わっており、大学での学びや経験を地域に還元している。

 何かしらの役割を持つこと、人の役に立つことに生きがいを感じられればすてきなことだ。誰もが生きがいを持ち、はつらつと暮らし、住んでいる街で最期を迎えられる社会の実現を目指したい。

 きょうは敬老の日。県内のお年寄りが「はつらつ寿命」を一日でも長く全うされることを強く願っている。(田栗祐司)

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