福岡社長(左)にアドバイスを受けながら、WHILLに試乗する松田一也基山町長。四輪駆動ででこぼこ道など悪路も走行でき、7.5㌢の段差も乗り越えられるという=基山町の基山モール商店街

WHILL開発のコンセプトなどを話す福岡社長=基山町の基山モール商店街

■外出支援「コンビニ諦めないで」

 基山町は次世代型電動車いす「WHILL(ウィル)」を使った買い物や外出支援の実証実験に取り組む。機器のコンセプトは「100メートル先のコンビニエンスストアを諦めない」。WHILL(本社・神奈川県)の社長で最高技術責任者の福岡宗明さん(33)に開発と普及への思いを聞いた。

 もともと私たちはボランティア団体で活動していた。土日や平日の夜に、メーカー出身のエンジニア同士の友人で集まり、「何か世の中の役に立つ物を作れないか」と語り合っていた。

■解決法探る

 そんな折、リハビリセンターに行く機会があり、「100メートル先のコンビニに行くのを諦める」という話を聞いた。走れる人なら1、2分で着く場所を諦めてしまう。なぜだろう、解決する方法はないか、と考え始めた。

 なぜ諦めるのか考えたとき、物理的な面と精神的な面があった。我々はエンジニアのメンバーが多く、まず物理的な面を考えた。「段差につまずくんじゃないか」「坂道は難しいのでは」-。しかし、よくよく聞くと、「そもそも車いすに乗って出かけたくない」「車いすに乗っている所を見られたくない」という意見があった。「『あの人、足が悪くなったんだ』と思われるから嫌だ」ということだった。これを何とかモノで解決したいと思った。

 日本でユーザー第1号の男性は、手動車いすを使っていたが、行けない道がたくさんあった。ただ、それ以上に負担なのが車いすで外に出ると「大丈夫ですか。お手伝いしましょうか」と周りに声をかけられる。それ自体はすごく助かるんだけど、「やはり、助けられる側なんだ」と思ってしまう。そういう時にWHILLを知って、乗ってみたいと思ってくれた。男性から「これに間に合わせてほしい」と言われたのが、本人の結婚式だった。「晴れの日」にふさわしいもの。「外に出て、胸を張って走れる。そういう乗り物が欲しかった」と言われた。

■誰もが乗れる

 我々は誰もが乗れて、誰もが乗りたくなる、そういう移動手段を作っている。足が動かない方だけではなく、幅広い方々に使ってほしい。そうすれば乗っていても「あの人、足が悪いんだ」と利用者が見られなくなる。より分け隔てない、境界のない世界をつくっていけると思っている。

 その思いの一つとして半年前、東京モーターショーに出展した。1日約300人、期間合計3千人の方が試乗した。小さいお子さんから高齢の方まで。車いす利用者も走れる人も、誰もが「楽しいね」と言って乗っていた。こういう風景を日本中、世界中に展開していきたいと願い、基山町からの提案を受け、協力したいと思った。

 障害者と健常者という言い方があるが、境目があるというよりも、いろんな人がいるのだと思う。走ることはできないけど、歩くことはできる。10分歩けるが、20分は無理だ。家の外までは出られるが、そこから先には行けない。すごくいろんな方がいる。そういう全ての方に使っていただけるような製品、サービスを提供したい。基山町の皆さんと協力してシステム全体を構築していけたら、素晴らしい社会を築けるのではないかと考えている。

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