原発の使用済み核燃料の再利用を進める高速増殖炉「もんじゅ」について政府は廃炉の方向で最終調整を進めている。文部科学省が責任ある運営主体を示せないためで、問題が長引けば、ほかの原発の再稼働に支障が出るという首相官邸の判断もある。高速増殖炉は核燃料サイクル計画の中核施設であり、廃炉とするなら計画は今後どうするのか。国は責任を持って方向性を示す必要がある。

 高速増殖炉は理論的には使った以上の燃料を生み出すことができ、資源小国の日本にとって夢の技術と位置付けられてきた。米国や英国、ドイツなどが研究を断念したが、日本は継続してきた。

 もんじゅは1991年に運転を開始した研究段階の原型炉。95年8月末に発電を開始したが、3カ月あまりで冷却用のナトリウムが漏洩(ろうえい)する事故が発生した。以来20年近く、稼働実績がない。福島第1原発事故後には機器の点検漏れや故障の放置が明らかになり、原子力規制委員会は「日本原子力研究開発機構」に運営主体として不適格との判断を示している。

 政府や与党の流れはすでに廃炉だ。菅義偉官房長官は政府方針に「そんなに長引かせる問題ではない」と述べ、茂木敏充・自民党政調会長は「廃炉以外の選択肢はない」とまで言い切る。

 もんじゅは建設費や維持費などでこれまで1兆円以上の巨額の国費を投じている。規制委が求める安全基準をクリアして再稼働するには、さらに5800億円の追加負担が必要になるという。存続にこだわれば、国民の批判の矛先がほかの原発の再稼働に向かうおそれがあり、経済的なダメージが大きいとの判断もあるようだ。

 ただ、廃炉で問題が全て解決するわけではない。原発の使用済み燃料には核兵器に転用できるプルトニウムが含まれており、これを減らすことが高速増殖炉の役割でもあった。もんじゅが廃炉となるなら核燃料サイクル計画はどうなるのか。その道筋を示すことが何よりも重要だろう。

 政府は研究継続の立場を示すため、茨城県にある国内第1号の高速増殖炉「常陽」(休止中)の再稼働を検討している。しかし、もんじゅより前段階の実験炉であり、もんじゅが技術的に解決できなかった高温の液体ナトリウムの制御は常陽でも容易ではない。

 玄海原発などで導入したプルサーマル発電で使用済み燃料を再処理したMOX燃料を使っており、核燃料サイクルは維持可能との見方もある。ただ通常のウラン燃料よりも高コストのほか、プルサーマルだけでは処理が追いつかず、たまる一方という指摘もある。

 資源小国として「夢の原子炉」にこだわりたいだろうが、最優先すべきは安全性だ。使用済み燃料を地下深くに隔離する直接処分の実現に向け、政治的な力を注ぐ方がより現実的ではないだろうか。

 核燃料サイクル計画は使用済み燃料を「ごみ」ではなく「資源」とみなすことで、さまざまな矛盾を封印してきた。このため、国内で原発が稼働して50年たった今も核のごみの最終処分場はない。

 政府は21日に関係閣僚会議を開き、もんじゅの廃炉を検討する。問題の先送りを続け、国民の不信感を増幅させた従来の原子力行政と決別するためにも明確な判断を示してほしい。(日高勉)

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