修業した隆太窯で作陶に励む井銅心平さん=唐津市見借、5月

 4月の熊本地震で被災した熊本県の若手陶芸家が、修業の地唐津で個展を開く。7年前に独立し、宇城市松橋町に窯を開いたが、東京での初個展などに出品する予定だった作品の半分以上が損壊。落胆と不安の中、師の支援で唐津に制作の場を移し、作陶に励んできた。

 震源地とされる益城町から約20キロ。井銅心平(いどうしんぺい)さん(34)が松橋町萩尾の実家内に築いた「萩見窯」も地震で大きく揺れ、4段積みコンテナが崩れ、棚に置いていた花器も落下した。5月に地元熊本、7月には東京での初個展が入り、注文品の納期も迫っていた。

 気持ちを切り替えて作陶を再開しようとしたが、余震が続き、いつ大きな地震がくるか分からない。作陶に集中できない日々が続く中、師事した唐津焼隆太窯(唐津市見借)の中里太亀(たき)さん(51)から案じる電話があり、「しばらくうちで作らんね」と誘われた。

 2006年から4年間、修業を積んだ隆太窯。師の厚意を受け、4月下旬から6月中旬まで約2カ月、工房の一角で作陶を再開した。いつもは一人でろくろに向かう井銅さん。「みんなでわいわい仕事するのは7年ぶりで、気持ちも晴れた」と話す。

 予定していた二つの個展も無事終了。感謝の意を込め、2年前に唐津初個展を開いた北波多の古民家ギャラリー「草伝社」で23日から10月2日まで個展を開く。

 井銅さんは熊本大学工学部で建築を学びながら「物を作るなら食器を作りたい」と陶芸家を選んだ。刷毛目や三島の丁寧な作風に定評があり、久しぶりに仕事を見た中里さんは「独立してからは土も上薬も変わる環境の中で、自分なりの作品が少しずつできてきている」と成長を感じる。

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