安倍晋三首相が来年1月の通常国会冒頭で衆院を解散するとの観測が、与野党で浮上している。12月の日ロ首脳会談で首相が精力を注ぐ北方領土交渉の進展があるかもしれないとの見方が前提にある。与党内では、これを「追い風」に世論の支持を得て衆院選に持ち込むのが得策との声がある。一方で自民党執行部は選挙基盤の弱い若手が多いとして、現時点では慎重だ。蓮舫代表が就任したばかりの民進党など野党側は、準備不足を突かれる急展開を警戒する。【共同】

 「前回衆院選から12月で2年がたつ。いつ解散があってもおかしくない」。今週に入り、麻生太郎副総理兼財務相は周辺にこう漏らした。

 衆院議員の任期満了まで2年という折り返し点を過ぎれば「いつ解散風が吹いてもおかしくない」(閣僚経験者)のが政界の共通認識だ。自民党内では「来年1月20日解散-2月19日投票」などといった日程が、にわかにうわさに上り始めた。

 首相は12月15日、ロシアのプーチン大統領を地元・山口に招いて会談する。これを突破口に領土問題を前進させ、平和条約締結へ道筋を付けたいとの意欲をのぞかせる。

■お墨付き

 長年の懸案で成果を得るには、日本側も譲歩を迫られる可能性が高い。首相周辺は「国民のお墨付きを得るには、選挙で勝つしかない。解散の大義はある」と指摘する。

 公明党も年明け解散に抵抗感はない。井上義久幹事長は今月17日の党大会で「現行の区割りで衆院選が行われる可能性も十分ある」と言及した。

 「1票の格差」是正のための衆院小選挙区定数6減などを反映させた新たな区割り案は来年5月までに勧告される見込み。候補者調整が必要な新制度の導入前に、首相が解散に踏み切ることはあり得るとの見立てだ。1月解散なら公明党が重視する来年夏の東京都議選と日程が離れ、十分対応できるとの判断がある。

■常在戦場

 1月開催が通例の自民党大会は3月への先送りが検討され、年明け解散説に拍車がかかる。「衆院選に勝った勢いで、総裁任期延長の党則改正実現を確実にし、安倍首相の連続3選に道を開くシナリオ」(中堅)が浮かぶ。

 野党側は身構える。民進党の蓮舫代表は15日の記者会見で「常在戦場」と強調。馬淵澄夫選対委員長は21日「総選挙が3カ月後か、もう少し先か分からないが、通常国会冒頭解散は十分に可能性がある」と述べた。共産党は野党共闘へ協議を加速させたい意向だ。

■臨戦態勢

 ただ自民党執行部は慎重な姿勢を示している。二階俊博幹事長は「今、誰も解散なんか考えていない」と早期解散を否定した。同党の衆院当選1、2回生の多くは後援会などの整備が遅れ「臨戦態勢が整っていない」(選対筋)ためだ。民進、共産両党の野党共闘で「最低でも20~30議席は減らす」との分析もある。

 与党が憲法改正の国会発議に必要な「3分の2以上」の議席を割り込む恐れも捨てきれない。天皇陛下の生前退位問題への対応もあり、選挙による「政治空白」が適切かも見極める必要がある。

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