小泉進次郎自民党農林部会長(左)に佐賀の農業現場を案内する中野吉實JA佐賀中央会会長(奥中央)=7月26日、佐賀市富士町

◆海外企業買収の恐れ/食料守る責務果たす

 環太平洋連携協定(TPP)承認案や農業改革について、中野吉實全農会長のインタビューの主なやりとりは次の通り。

 -臨時国会でのTPP承認に安倍晋三首相は強い意欲を示している。

 中野 意欲は分かるが、通常国会で示された黒塗りだらけの資料では議論は深まらない。条約を結ぶのであれば、農家が納得した上で、と思うが、これでは納得も何もないだろう。どうも国の思いをすべて農業関係に押しつけようという風潮があるようでならない。「全農」への攻撃的な批判が政治側から挙がっているが、承認に向けて一気に進めようという思惑も感じ、困惑している。

 -7月下旬、佐賀を訪れた小泉進次郎自民党農林部会長は「日本の肥料農薬は韓国の2倍、3倍高い」と繰り返し、「全農改革が本丸だ」とぶち上げた。

 中野 生産資材の価格が問題にされているが、全農は品質の保証もしっかりしており、在庫も確保した上で適正価格での供給に努めている。そういう意味で「今までやってきたことに間違いはない」と記者会見で述べた。言葉足らずの部分もあったので、改めて会見をしてもなお、「全農会長は改革に後ろ向き」といまだに言われるが、自己改革には鋭意取り組んでいる。

 -自己改革の第1弾として、全農は8月中旬に韓国製肥料の輸入を決めた。荷揚げ港からの直送体制を整えることで従来品より3~4割程度安くなる見通しだ。

 中野 JAさがでも5年ほど前に韓国製の肥料を輸入・販売したが、固まりやすいなど、日本製との品質の違いもあって現場の農家の評判は良くなかった。今回も農家の注文を取ったが、現段階ではゼロ。佐賀県内でコンテナ一つ分を購入して試験栽培などで使い、農家の需要があれば取り扱いを継続することになる。

 農家の要望に応えて増え続けた肥料農薬の銘柄を絞り込んだり、流通体制の見直しも進めている。合わせて「ジェネリック農薬」の開発も積極的に進め、国側にも承認の規制緩和を求めているところだ。

 -小泉部会長ら“改革勢力”は全農の株式会社化を強く求めている。

 中野 改正農協法で法的には可能になったが、全農を含めた農協組織は農家が協同の理念の下に設立された組織であり、株式会社化は設立理念を根底から覆すことになる。海外では資金調達をするために農協組織を株式会社にしたところもあるが、巨大企業に買収され、農家のための組織として存続できなくなった実態もある。

 株式会社化をすれば瞬く間に買収され、日本の食料流通が外国に支配されることになりかねない。海外の投資家は虎視眈々(たんたん)と狙っている。株式会社化を強制するようなことは、断固反対と言わざるを得ない。われわれは日本の食料を守っていく責務がある。

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