インタビューに応じる西南学院大人間科学部の倉田康路教授=佐賀市の佐賀新聞社

■倉田康路さん(西南学院大教授)
「公的サービス足りない/家族の共倒れ防止策を」

 鹿島市で起きた殺人事件に多くの人が胸を痛めたのは、加害者と被害者になった夫婦の境遇を思い、「いつかこういう立場になるのでは」と身につまされたからだろう。この先、高齢者を社会で支えていけるのかという不安の表れでもある。

 容疑者は、体が不自由な妻を自宅で介護するため、介護保険サービスを利用した。ケアマネジャーや市職員らによって、地域で支える態勢が整えられたのに、事件は起きた。

 5年ほど前、佐賀県で在宅介護をする家族302人に「今後望むことは何か」と複数回答で尋ねたところ、「もっとサービスを増やしてほしい」が7割、「相談相手が欲しい」との回答が5割あった。多くの人が現在の公的サービスだけでは足りないと感じている。

 国は膨らむ介護費を抑えるため、施設ケアから在宅ケアに重点を移しつつある。「住み慣れた地域で最期まで自分らしく過ごせるように」とうたっているが、現状では施設のような24時間のサービスを望むことはできない。家族の負担に頼らざるを得ず、そこに虐待などの事件につながりかねない「落とし穴」がある。

 介護を担う家族のサポートに、もっと力を入れるべきだ。在宅介護の場合、1人の介護者に負担が集中する傾向があり、そのような人ほど誰にも相談できず孤立している。SOSを待つのではなく、周囲から声をかけて異変を察知し、家族の共倒れを防ぐ仕組みをつくらなければならない。

 今後、在宅ケアの流れはさらに加速し、地域での老老介護は増えていく。その一方で、国は在宅介護に関わる公的サービスを縮小する方向で検討している。在宅の限界を見極め、家族に過度の負担がかからないようにしないと、同じような事案が続いてしまう。

=プロフィル=

 くらた・やすみち 西九州大教授を経て4月から西南学院大社会福祉学科教授。高齢者福祉が専門で、佐賀県内の官民学でつくる高齢者虐待防止ネットワークさが代表を務める。佐賀市。50歳。

=読者と記者の交差点 「老老介護」どう支える= 識者インタビュー

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