井上萬二さんの手ほどきで、中原一馬さんが作った白磁の湯飲み。縁取ったくぼみが気に入っている

白磁や白石焼の魅力を語った中原一馬さん=鳥栖市の自宅

玄関には自作した苔玉を飾り、来客を迎える

■手作りの白磁湯飲み 日曜の朝、家族でコーヒー

 49歳の時、ずっとやりたいと思っていた焼き物づくりを始めました。この年からやれば、60歳になるころには何とか一人前になるだろうと思いましてね。

 初めに、三養基郡みやき町にある白石焼の弥一郎窯に教えてほしいと頼みにいきました。2003年9月ごろのことです。窯主の岡ワイさん(故人)はご主人を亡くし、辞めようとされていましたが、頼み込むと、「じゃあ一緒にやろう」と言ってもらえましてね。

 約半年後、西松浦郡有田町の人間国宝の井上萬二先生のところで陶芸教室が開かれていると、妻から聞きました。申し込んで半年ほど待ち、今に至るまで通い続けています。

 土こねから教えてもらいましてね。「どろこね3年」というそうで、空気が入らないようにこねるんですが、これが難しい。ろくろも習っておけば、いろんなものが作れるだろうし、半年ぐらい通えば大丈夫だろうと思っていましたが、とてもとても…。「ろくろは10年かかる」そうです。

 元々はね、玄関前に飾るような苔(こけ)玉やシダ科の植物シノブを入れる器を作りたかったんです。

 18歳まで自然豊かな鹿島市能古見で育ちました。実家の周りで祖父や父が苔玉を作ったり、大きな株にシノブを植え付けたりして観賞していましてね。就職で家を離れると、その苔玉に無性にひかれるようになっていった。若い頃に見た風景が、器づくりの出発点といえるかもしれません。

 これまで手作りした中で気に入っている作品は、白石焼の土ものの器と、萬二先生の教室でつくった白磁の湯飲み。萬二先生には手を取って教えてもらいました。「こうじゃない、こうよ」と。この白磁の湯飲みはそのとき、ろくろで作りました。十数個を一度に焼いて、うまくそろったのがこの5個です。

 私の焼き物を家族も気に入ってくれていましてね。妻(57)と次女(20)も仕事をしているから、家族がそろうのは日曜日の朝だけ。このとき、私が手掛けた白磁の湯飲みに、思い入れがあるコーヒーを注ぎ団らんのひとときを過ごすんです。日々の忙しさを忘れることができる、1週間のうちで最も幸せな時間です。

 私は焼き物をずっと見ていても飽きないですね。家族はあきれているかもしれませんけれど。器に意識がすーっと吸い込まれるような感じになり、心が落ち着くんです。

■余録 苔玉

 インテリアとして人気が高い苔玉は、苔を貼り、シダ植物のシノブが根を張る。小さな盆栽のようなものだが、中原一馬さんは鳥栖市の自宅玄関前に、土ものや磁器に植え付けた苔玉約50個を並べている。

 すべて自作の器で、お気に入りは、緑とのバランスが絶妙な手びねりの白石焼。苔玉の魅力を「自然を小さな器に再現した世界で、器に巻き付くツルや根は生命力そのもの」と話す。休日は焼き物を眺め、苔玉をはさみで整えたりしていると時間を忘れる。

 久留米市の福祉施設の職場にもよく持参する。お年寄りたちは「こんな小さな器の中でよう生きてるね」と顔をほころばせながら見入ってくれる。こうした反応も次作への意欲になる。

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