■進取の気風忘れないでいたい

 今年もあと1週間となった。年の瀬、気ぜわしさが増す中で、1年を振り返る時期でもある。2016年はどんな年だったか。人によって見方はさまざまだろうが「時代の転換期」を実感した年ではなかったろうか。

 まず米大統領選で共和党の実業家ドナルド・トランプ氏が勝利したことだろう。当初、泡沫(ほうまつ)候補扱いされた型破りな指導者が超大国を率いることになり、世界に衝撃が走った。欧州連合(EU)から離脱の是非を問う英国民投票も、予想を覆し離脱派が過半数を上回った。

 国益最優先を掲げたトランプ氏は既存の政治、経済に不満を持つ有権者に支持を広げ、英国では移民流入やEUの権限拡大などへの反発が背景にあったとされる。いずれもグローバル化を進めてきた世界の流れに逆行する排外、保護主義的な思想が台頭してきたことを象徴する出来事だった。

 国内に目を移すと参院選で与党が大勝、両院で改憲発議に必要な3分の2を確保、PKO派遣の自衛隊に「駆け付け警護」の任務が付与された。70年以上続いてきた戦後スキームが確実に動いている。そう感じずにはいられなかった。

 佐賀県内はどうだったのだろう。山口祥義知事は就任以来、佐賀には「何もなか」という人が多いが、自然、歴史・文化、伝統技術、食など素晴らしいものがいっぱいある、と言い続けている。

 後ろ向きな気持ちの脱却に向け、「佐賀さいこう」というスローガンを掲げている。「佐賀再興」「佐賀最高」「佐賀に行こう」などをかけており、県民一人一人が佐賀への誇りや愛着・郷土愛を育み、日本や世界に向け発信していく。

 知事の思いはまさに「心の転換」なのだろう。この延長線上にあるのが「明治維新150年」(2018年)に向けての取り組みで、近代日本を拓(ひら)いた佐賀の「技・人・心」を次世代に継承していく。キックオフ特集が佐賀新聞の今月9日に掲載され、わが社も新年から2年にわたる企画を始める。しかし、残念ながら佐賀の偉業に関し県民の認知度は意外と低い。県文化課の調査によると、年齢が若いほど無関心層が多い感触を持っているという。

 そこで提案だが、県立高校入試で毎回、幕末・維新期の佐賀の偉業や偉人たちに焦点をあてた出題ができないだろうか。そうすればいやおうなく中学段階から先人の偉業を学ぶことになる。もちろん、佐賀藩の功績は中学教科書に載っていない部分が多く、入試の機会均等には他県から受験する生徒に対する配慮が必要となる。藩政時代は違う藩だった唐津地区の生徒にいかに関心を持たせるかも課題だ。

 確かにハードルは高く、実現は難しいかもしれない。ただ、それぐらい大胆なことをしなくては、長年染み付いた感覚は転換できないと考える。司馬遼太郎に「奇跡の藩」と言わしめた幕末維新期。その進取の気風をわれわれ佐賀県民は、忘れないでいたい。(編集局長 澤野善文)

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