臨時国会が始まった。所信表明演説で安倍晋三首相は「アベノミクス推進国会」と位置付け、環太平洋連携協定(TPP)の早期発効を急ぐ姿勢を強調した。

 7月の参院選を経て、国会の構図も新しくなった。自民・公明がさらに議席を積み増し、衆参両院ともに圧倒的な多数を占める。一方の野党は民進・共産などによる野党共闘で対抗。蓮舫氏がトップに就任した民進党は、党勢回復につなげられるかの試金石となる。

 きょう27日からは代表質問が始まるが、中でもTPPは大きなテーマになる。安倍首相は日本が先んじて批准することで、いまだに反対論が根強い米国を後押ししたい考えのようだが、果たして思惑通りに進むだろうか。

 TPPを主導してきたオバマ大統領は退任が近づき、すでに政治的なレームダック(死に体)を迎えつつある。米国議会は反対論が根強く、オバマ氏が残された任期で批准にこぎつけるかは疑問だ。しかも、オバマ後を担う大統領候補は、クリントン氏もトランプ氏も反対を鮮明にしており、今後、容認に転じるとは考えにくい。

 そもそも、日本国内においても、国民的な支持を得たとは言えないだろう。あまりにも情報が小出しで、国内農業への影響をはじめ、TPPがもたらす未来像がはっきりとは示されていないのが原因だ。

 不確定要素が多いTPPに注力するのではなく、ほかに優先すべきテーマがあるのではないか。安倍首相は「アベノミクスを一層加速し、デフレからの脱出速度を最大限まで引き上げていく」と述べたが、このまま突き進んでしまって大丈夫だろうか。

 この間、日本経済は相当な無理を重ねてきた。日本銀行はマイナス金利に突き進み、保有する国債は400兆円に迫る。株価を下支えしてきた年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)に至っては、株式の運用割合を倍増させ累計1兆円超の赤字に転じ、私たち国民の年金まで危うくしている。

 ここはいったん立ち止まって、アベノミクス路線を根本的に検証すべきではないか。

 今国会からは、憲法改正論議も動き出す。衆参両院で、改憲勢力が発議に必要な3分の2議席を獲得し、憲法改正がいよいよ現実味を帯びてきた。安倍首相は「憲法はどうあるべきか。その案を国民に提示するのは私たち国会議員の責任だ」として、憲法審査会で議論を深めようと呼びかけた。

 焦点は憲法9条の在り方だろう。安倍政権は一昨年、歴代内閣が「9条違反で行使できない」としてきた集団的自衛権を認めさせるため、内閣法制局長官を交代させて“解釈改憲”で乗り切った経緯がある。

 安保法制成立を受けて、南スーダンでのPKО活動の任務に「駆け付け警護」を加えようとしているが、現地は内戦状態に逆戻りしており、PKО派遣5原則の「停戦合意」さえ崩れている。実績作りのために、これ以上、自衛隊を危険にさらしてはならない。

 1年前の安保法制成立を振り返ると、強行採決で議事録さえも残せないほどの混乱ぶりだった。さらに力を増した政府・与党には、数にまかせた国会運営は許されないと、くぎを刺しておきたい。(古賀史生)

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