東洋人は森全体を見渡す思考を持ち、西洋人は木を見つめる思考である-。米国の社会心理学者、ニスベット氏の説だ◆水中の様子を動画で見せると、米国人は専ら大きくて目立つ魚に注目したが、日本人はまず池や水草など背景全体に目を向け観察を始めた。東洋人は「場」全体に注意を払い、西洋人は対象をカテゴリー(範疇(はんちゅう))に分類したがるのだそうだ(『木を見る西洋人 森を見る東洋人』)◆一概には言えないだろうが、文化が違えば思考も変わる。その西洋と東洋が互いに理解する道があることを学問の世界で示したのがドイツの医師で植物学者のシーボルトである。江戸時代に長崎に滞在し、近代医学を伝えた。佐賀市の佐賀城本丸歴史館で、没後150年の展覧会が開催中(10月23日まで)だ◆1826(文政9)年、オランダ商館長の江戸参府に同行し、佐賀を歩いた時の記述が残る。嬉野の茶園を「全国的に有名で優良な緑茶を生産する」と評し、武雄温泉では藩主の浴場に入り「清潔さは驚くほど」と絶賛。信仰を集めた江北町の馬頭観音にも触れている◆江戸後期と幕末の2度の日本滞在で、動植物の標本など多くの物産を集めたシーボルト。欧州で日本を紹介する博物館展示を望んでいた。日本で文化の多様性を学んだ彼は、東西の融和に思いをはせていたことだろう。(章)

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