自民党が「連続2期6年まで」の党総裁任期を延長する方向で検討に入った。「連続3期9年まで」の案が軸となりそうだが、首相周辺には「海外の例をみれば、任期は撤廃していい」との声もある。ただ自民党が政権の座にあれば「党総裁=内閣総理大臣」で、一政党の組織の問題で終わらない。長期政権の弊害はないのか、慎重な議論を求めたい。

 現行の党則に従えば、安倍晋三首相の自民党総裁の任期は2018年9月まで。首相周辺としては「連続3期9年」に延ばすことで、20年の東京五輪を首相として迎えることができるだけでなく、首相の悲願である憲法改正発議までの時間の余裕ができるとの思惑があるのだろう。

 安倍首相が政権に返り咲くまでは、首相が1年ほどの短期で交代することが多く、政治の混乱も多かった。側近たちは「しっかりした基盤で政権を運営することは対外的にマイナスではない」「任期を設ける必要があるのか。人気と評価が下がれば続投できない」と流れをつくろうとしている。

 海外はどうか。米国やフランス、韓国など大統領制の国は、その強大な権限を考慮して憲法などで再選回数の制限をつくるケースが多い。一方、議会の多数派が政権を担う議院内閣制では、首相の任期を制限する法律を持つ国は少ない。日本もそうだ。

 英国では“鉄の女”と呼ばれた故サッチャー首相が11年務め、ドイツのメルケル現首相も11年目に入っている。海外の事例が、自民党の総裁任期延長論の根拠にもなっている。

 ただ懸念すべき点はある。任期延長により、さらに強大な力を得る自民党総裁を、党組織が制御できるのかということだ。自民党政権下では党総裁は首相になることを意味し、国民に深く関わってくる問題となる。

 旧来の派閥政治には問題点も多かったろうが、リーダーたちが切磋琢磨(せっさたくま)していれば、首相が独り善がりになっても待ったをかける勢力は出てくるだろう。しかし、“1強”の安倍首相になびいているのが今の自民党の現状だ。首相がサミット後に突然、消費税増税先送りを表明した際も党内の反対論は急速にしぼんだ。異論を出しにくい状況になっていないか。

 26日の臨時国会の所信表明のシーンはさらに印象的だった。防衛や警備の任務を果たす自衛隊員らをたたえるために、首相の呼びかけで自民党議員が一斉に起立し拍手した。国会でのスタンディングオベーションは極めて異例だ。安倍政権と友好的な日本維新の会からも「異常な光景。自画自賛している」と批判の声が出たほどだ。

 人事では、いち早く「任期延長容認」を打ち出した二階俊博氏が幹事長に抜てきされた。今の自民党は「長い物には巻かれろ」という空気が支配していないか。右から左まで多様な意見があった自民党組織の硬直化が危惧される。

 19世紀の英国の政治思想家ジョン・アクトンの言葉を借りれば、「権力は腐敗する。絶対的な権力は絶対に腐敗する」。政権の座があまりに長ければ、ひずみが出てくるということだろう。自民党は来年3月の党大会で総裁任期延長の党則改正を目指しているが、国民の意見を聞きながら慎重に検討すべきではないか。(日高勉)

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