ティーオリーブ、ピンクドッグウッド、フラワリングピーチ…。ここに並べた花の名前だけでぴんと来る人は、相当なゴルフ通だろう。世界4大トーナメントのひとつ「マスターズ」の各ホールには、花の名前がつけられている◆その名の通り、マスターズ(名手たち)だけが招かれる伝統の舞台に50回連続で出場し、4度も制したアーノルド・パーマーさんが亡くなった。87歳だった。どこまでも強気な攻めのゴルフと、明るい人柄。ゴルフと縁がない人は、彼をファッションデザイナーと誤解していたかもしれない。そのカラフルな雨傘マークのブランドで、私たち日本人にはおなじみだからだ◆作家の山際淳司さんは遺作となった『自由と冒険のフェアウエイ』(中央公論社)で、3大テノール歌手のひとり、プラシド・ドミンゴと重ねて「幅広いファンをつかんでいる。けれん味たっぷりのパフォーマンスを見ていても、やはりパーマーだな」とたたえている◆マスターズにはすべてがある、と山際さん。美しさの底に怖さを秘めたコース、それを力でねじ伏せようとする若者たち、経験を信じてコースに語りかけようとするベテラン…。「(会場の)オーガスタは、何度でも行ってみたくなる町だ」と書いた◆コースに咲いた伝説の“名花”は、鮮烈な記憶を私たちに残して、逝った。(史)

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