ひざの内側から後ろ、足の付け根あたりに「浮き出た血管」や「こぶ」、「むくみ」はありませんか? それは「下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)」という病気かもしれません。この病気は妊娠、出産、立ち仕事などで悪化します。皮膚が固くなって色素が沈着してくると、手術を要することもあります。最近のデータで、患者が増加しているといわれる下肢静脈瘤について、長崎血管外科クリニック(長崎市樺島町)の多田誠一院長に話を聞きました。

弁が壊れ静脈の血が逆流するのが原因

 血液の循環は、心臓から動脈を通り、足先まで流れ、静脈を通って心臓に戻ります。足の静脈には通常、下から上に流れても逆流しないよう「逆流防止弁」があります。この弁が壊れたり、機能しなくなったりすると、静脈の血が逆流して足に下肢静脈瘤ができるのです。うっ血して血がたまると、血液成分がしみ出して、かゆみが伴います。鮮明な青色が多い網目状静脈瘤、紫紅色が多く隆起しないクモの巣状静脈瘤のほか、大伏在静脈瘤、分枝静脈瘤、陰部静脈瘤、血栓性静脈炎など、症状もさまざまです。この病気は女性の患者も多く、妊婦の方や出産した方、男性も含めて長時間の立ち仕事の方にも見られます。また、年齢とともに罹患頻度が上昇し、遺伝的な要素も見られます。重力の影響を受けやすいとされ、肥満、高血圧、食生活、便秘などにも注意が必要です。


膝下にぼこぼこが出ている「大伏在静脈瘤」

つま先立ち運動が予防に効果的

 では、いつごろから発症するのでしょう。早い人は10代から発症しますが、加齢とともに罹患率がアップしますので、50歳~69歳は61%、70歳以上では75%の方が発症しているというデータがあります。スカートをはく女性、テニスなどのスポーツで短パンを身に着ける男性など、他人の目を気にする方もいます。一般的に、静脈瘤の重症度の分類は6段階に分けられ、皮膚変化(色素沈着、湿疹、脂肪硬化)が見られるクラス4からクラス6(活動性潰瘍)は「重症」に分類されます。予防策としては、長時間の立位を避け、つま先立ち運動に効果があるといわれていますので、気になる方は日ごろからつま先立ちを心掛けるようにするとよいでしょう。静脈瘤は命にかかわるような疾患ではありませんが、足がだるい、重い、疲れやすい、夜中に足がつったり痛んだり、皮膚に湿疹や黒ずみができた場合などは、症状が悪化する前に早めの受診をお勧めします。

日帰り手術は1時間内で終了

 下肢静脈瘤にはさまざまな治療法がありますが、当医院では表在静脈の逆流、静脈血栓や弁機能をエコー検査した後、静脈瘤の治療方針を決定しています。弾性ストッキングや弾性包帯による「圧迫療法」、硬化剤を注入して静脈を閉塞させる「フォーム硬化療法」、静脈を抜き取る「ストリッピング術(伏在静脈抜去術)」などありますが、最も多いのは針を刺すだけで血管の内側からレーザーを焼灼する「血管内レーザー手術」など、最適な方法を組み合わせることにより、患者さんに安心していただける治療を行っています。手術時間は20分から50分で終了します。手術終了直後から歩くことが可能で、医師の説明後帰宅可能ですし、次の日は入浴もできます。どの手術にも保険が適用されますので、費用面でも患者さんの負担が軽減されるようになりました。当院は観光地・長崎で開業しているので、来院された県外の方の中には、午前中手術をして、午後から観光地巡りをされる方もいらっしゃいます。また、日帰り手術ができるということで、なかなか自由に休みが取れない県内外の自営業の方も来院されています。下肢静脈瘤血管内治療がメーンですが、下肢のみの診断ではなく、浮腫など他の症状があれば、エコー主体の低侵襲検査で、全身の原因検索を行っています。これからも最新技術を駆使しながら、患者さん目線での総合的治療を目指したいと思います。

MEMO 診療の流れの一例

1. 診療予約
 まずは電話で診療を予約。保険証やお薬手帳、採血結果や人間ドッグの結果などがあれば用意してください。紹介状は原則不要。

2. 初診日
 受付、問診票の記入の後、更衣室で着替えを行い診察室へ。エコー検査の後、治療方針を決定します。手術が必要な場合は、看護師からの術前説明と、採血やレントゲン、心電図などの術前検査を追加して行います。

3. 手術当日
 手術は、眠っている間20~50分で終わります。手術の後、自分で歩いて診察室に戻り、医師から術後説明を受ければ、すぐに帰宅できます。

4. 術後
 血管内治療(レーザー治療)を受けた人は、術後1日目、1月目にエコーにて経過チェックし、その後は必要時に追加検査を行います。


リラックスできる雰囲気の手術室

ドクター紹介

多田 誠一
長崎血管外科クリニック 院長

ただ せいいち 1994年長崎大学医学部卒業、2001年長崎大学大学院を卒業。日本心臓血管外科学会認定の心臓血管外科専門医として長崎大学病院、大分県立病院にて、心臓、大血管、末梢動脈・静脈瘤手術に従事。08年から、ながさきハートクリニックにて脈管専門、レーザー焼灼術指導、日本循環器学会認定の循環器専門医として7年間、日帰り静脈瘤手術に専念。日本静脈学会評議員、日本短期滞在外科手術研究会世話人。医学博士。


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