平均寿命が女性86.4歳、男性79.6歳の今、高齢者の6人に1人が生活の中で介護や支援が必要となっています。10年後は65歳以上が3500万人、75歳以上が2200万人に膨れ上がる「2025年問題」を前に、健康寿命(介護なく自立した期間)を延ばそうと、国はロコモティブシンドローム(略称ロコモ)予防と対策を進めています。ロコモとは何か、予防や対策など佐賀大学の整形外科医・森本忠嗣氏に聞きました。

ロコモ―運動器の障害で移動機能が低下した状態

■佐賀県はロコモ対策先進県

 県内の日常生活に支障のない健康な期間の平均(※1)は男性70.3歳、女性73.6歳です。この期間を平均寿命により近く、もっと延ばすために、まずは正しくロコモを知ることが大事です。

 メタボは知っているけど、「ロコモって何?」という人も多いと思います。県と佐賀大学は早くからロコモ対策推進委員会を組織するなど、ロコモ予防への取り組みを始めました。この取り組みは「佐賀県方式」と呼ばれ、全国的に注目されています。その結果、都道府県別「ロコモ」認知度では、佐賀県は67%と高く全国1位でした(2014年)。これを80%まで引き上げるのが厚労省の目標とされています。

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■運動でロコモ予防

 ロコモ(運動器症候群)とは、加齢による運動器の障害により、要介護状態になる危険性が高くなる状態をいいます。

 運動器とは全身を支える骨や筋肉、下肢を曲げたり、衝撃を吸収する関節(軟骨)、背中(腰)を動かす関節や椎間板、靭帯、神経などからなります。ロコモの代表的な疾患を部位別にみると、骨は骨粗しょう症や骨折、筋肉の疾患ではサルコペニア(筋肉減少症)、ひざは変形性膝関節症、腰は腰部脊柱管狭窄症、坐骨神経痛、変形性脊椎症があります。これらの疾患にかかると、姿勢の変化や痛みやしびれ、筋力の低下、バランスの悪化、移動機能が衰え、進行すると要介護状態に近づいてしまいます。

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 平成25年度厚労省国民生活基礎調査では、介護が必要になった理由(要支援、要介護を含む)の第1位は運動器の疾患36.1%で、2位脳卒中18.5%、3位認知症15.8%、心疾患、糖尿病と続きます。この調査結果から、介護状態にならないためには生活習慣病が起こりやすいメタボリックシンドローム(略称メタボ)予防と合わせて、ロコモ予防が重要だということが分かります。

7つのロコチェック!!

日常でも細やかに動くことを意識して

■趣味や新しいことに挑戦を

 ロコモは50歳以降、急激に増えます。前述したロコモの要因となる運動器の代表的な疾患には、2人に1人が罹患していると言われています。痛みなどがあるから動きたくなくなる。動かなくなるとより運動機能の衰えが増してロコモが進む―という悪循環から脱出するために大切なのは①気持ち。「もう年だから」という消極的な気持ちが体を動かさなくなります。よい姿勢を保ち、好奇心旺盛に音楽や絵画など趣味や新しいことに挑戦することが、元気につながります。楽しいことに集中することで脳内麻薬が分泌して痛みやしびれも忘れてしまうことがあります。②生活習慣の改善。筋肉や骨は使わないと弱りますから、適度な運動をしましょう。運動はロコモ予防だけではなく、メタボの改善などにもつながります。食事はカルシウムということではなく、五大栄養素をバランスよく。1日3回、1週間をトータルして必要量を取るようにします。③お薬(特に、骨粗しょう症薬や痛み止め)。痛み止めの目的は痛みをとるためだけでなく、痛みを抑えて運動をできるようにするためです。毎日軽くてもいいので運動することが骨密度の増加に効果があり、骨粗しょう症などの治療や転倒予防にもつながります。年を取って足腰が弱り、歩けない、立ち上がれない、寝たきりとなる介護状態を防ぐために、若いうちからの運動がおすすめで続けることが大事です。最近は、運動がロコモ、メタボだけでなく、寿命、老化防止、認知機能、アレルギー、喘息、がん、うつ病など様々な病態の発症や増悪、そして予防に大きくかかわっていることもわかってきています。

■ロコモ予防におすすめの運動

 ロコモ予防におすすめの運動は①散歩―15~20分間、少し汗ばむ程度の速さで、まず2週間続けてみてください。慣れたら時間を増やすなど自分のペースで続けましょう。②ラジオ体操、佐賀でしたらミランバくん体操―関節の曲げ伸ばしなど、普段は使わない部分を動かす全身運動で、深呼吸やバランス訓練にもなります。③家庭でも簡単にできるロコトレ(スクワットと開眼片足起立)もおすすめです。日常の中でも意識してこまめに動くこともロコモ予防になりますが、運動で痛みを感じるようでしたら無理せずに整形外科医にお尋ねください。ロコモ予防で、佐賀県の健康寿命を日本一にすることが、佐賀県の整形外科医の目標です。

散歩、体操、ロコトレで予防

お話をうかがった方

森本忠嗣氏

森本 忠嗣(もりもと ただつぐ)氏
佐賀大学 整形外科医

平成10年、佐賀医科大学(現・佐賀大学)卒業後、同大学整形外科入局。平成14年、福島県立医科大学(国内留学)。長崎労災病院、佐賀記念病院勤務の後、平成22年、佐賀大学病院整形外科助教。現在、佐賀大学病院整形外科講師。主な資格は日整会専門医・脊椎脊髄病医、日本脊椎脊髄病学会指導医、骨粗鬆症学会認定医

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