せきは体を守る反射運動ですが、呼吸器疾患、喫煙、心因性のストレスなどでも起こります。長引くせきは体力を消耗させて普段の生活にも影響しますから、早く鎮めることが大事です。せきの基本的役割や日本人に多い慢性咳嗽(がいそう=せき)の「咳喘息」やその治療法、結核などについて、佐賀県医療センター好生館呼吸器内科の内科部長・岩永健太郎氏に聞きました。

せきをしている期間で違う原因。
同じ病院で経過観察を

■さまざまな原因でおきるせき

 「せき」は、気道に異物が入りそうになるのを防いだり、のどにたまった分泌物を外に出したりするなど正常なからだの防御反応です。皆さんも日常生活の中でも経験したことがあると思います。

 せきは、ほぼすべての呼吸器疾患が原因となり得ます。そのほか喫煙や冷気、乾燥、粉塵(じん)吸入など気道が刺激を受けた時にもおこりますし、逆流性食道炎や後鼻漏といった呼吸器以外の病気、さらには緊張など心因性ストレスが原因となることもあります。

■診断に必要なせきの期間とたんの有無

 せきの原因を考えるときには、「せきがどのくらい続いているのか」、「たんが絡んでいるのか」がポイントになります。「咳嗽に関するガイドライン 第2版」ではせきの持続している期間によって3週間未満のせきは「急性咳嗽」、3~8週間未満の場合は「遷延性咳嗽」、8週間以上持続するせきは「慢性咳嗽」と分類されています。急性咳嗽の原因は風邪など感染症によるものが最も多く、遷延性から慢性の咳嗽では感染症以外の原因も考えられます。せきが続いている期間で原因を調べるための検査や治療が違いますから、せきが止まらないからと次々に病院を変えないで、通院しながら治療や経過観察をしてください。また、たんが絡む場合は何らかの呼吸器の病気があると考えていいでしょう。

■2週間以上続くせきは『結核』の可能性も

 日本は先進国の中で肺結核の罹患率が高く、年間約1万8千人が発症し、約2千人が死亡しています。佐賀県の罹患率(平成27年調べ)は全国ワースト6位と高く、毎年140人前後が発症し、約20人が亡くなっています。特に高齢者については、倦怠感(体のだるさ)が続く、急にやせるなどの症状がある場合は、結核かもしれません。せきやたんが2週間以上続くときはぜひ胸部レントゲン撮影など検査や診察を受けてください。また「せき」などの症状のある方は、周りの方へうつさないために、来院時にはマスクを着用しましょう(咳エチケット)。

せきの誘因となるたばこなどは避けて

■日本人に多い「咳喘息」

 慢性咳嗽の原因で日本人に多いのは「咳喘息」です。咳喘息の症状はせきのみで、喘息のように呼吸時にヒューヒュー、ゼイゼイという音が出ることはありません。たんの絡みもなく、胸の音も良好、肺活量など呼吸機能検査をしても異常がありません。これまでは咳喘息の診断は難しく治療に困ることも多かったのですが、最近は呼気NO(一酸化窒素)濃度を測定する簡便な機器が登場したので、診断に迷うことも少なくなりスムーズに治療ができるようになりました。

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■肋骨痛める高齢者も

 せきの治療として原因に対する治療と症状に対する治療が必要になります。長引くせきに精神的・肉体的に疲弊して、来院する患者さんも少なくありません。高齢者の中には激しいせきのため肋骨を痛める人もいるほどです。そのため早めに症状を和らげるような治療が大事になります。

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喫煙も咳を誘発する原因の一つと言われている

 またせきが続いているときは、安静にしてのどへの刺激を少なくすることが大切になります。喫煙をしている方は必ず禁煙してください。大きな声で会話することも控えたほうがよいでしょう。クーラーなど症状がひどくなる原因があるときはそれを避けてください。

 市販の鎮咳薬は風邪の後に残るせきなど有用な場合もありますが、数日飲んでもせきが治まらない場合は長く使用せず、早めに医療機関を受診したほうがよいでしょう。

お話をうかがった方

岩永健太郎氏

岩永 健太郎 氏
佐賀県医療センター好生館
呼吸器内科 部長

いわなが けんたろう 佐賀県医療センター好生館呼吸器内科部長。日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本内科学会総合内科専門医、指導医

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