腎臓に代わり血液を浄化

 成人の8人に1人が罹患(りかん)し、「新たな国民病」と言われるのが慢性腎臓病です。自覚症状がないために病状が進行した状態で見つかり、人工透析治療を余儀なくされる方も増えています。ひらまつ病院(小城市)では、「地域の中に安心して安全な人工透析治療を受けられる施設が必要」と考え、今年4月に小城市に初めて「透析センター」をオープン。腎臓の役割や慢性腎臓病の原因や治療などを、同センターの腎臓内科専門医・岸知哉さんに聞きました。

慢性腎臓病の原因 約50%は糖尿病

 肋骨の下あたりに左右1つずつある腎臓。全身を巡って酸素の供給や二酸化炭素の除去、栄養分やホルモンを届ける血液から出る老廃物や毒素の浄化、不必要な水分を尿にして排出し、体の環境をきれいにする、いわば「体の洗濯機」です。その機能の低下が慢性的に続くさまざまな状態を総称して「慢性腎臓病」といいます。

 慢性腎臓病の主な原因は、生活習慣病と関係がある糖尿病や高血圧症、動脈硬化。特に糖尿病は原因の約50%を占めています。腎臓の細い血管が硬くなる「腎硬化症」など、腎臓に障害が起きてくると、慢性腎臓病から徐々に人工透析療法が必要となる「腎不全」へと進行していきます。

 慢性腎臓病は自覚症状がなく、いつのまにか進行しています。慢性腎臓病の評価はⅠ~Ⅴ期に分かれていますが、症状が出るのはⅣ期になってからです。腎臓が約30%しか機能しないため水分や塩分の排出がうまくいかずにむくみや血圧上昇が出てきます。また、腎臓は造血ホルモンを作り出す臓器なので機能が低下すると貧血や息切れしやすくなります。Ⅴ期の中盤になると、機能するのは5~10%で、この段階になると病気を治すことは難しく、「人工透析」に入る時期を考えていくことになります。人工透析以外の治療は、腎臓移植しかありません。

透析治療は受けやすい環境で

 人工透析とは腎臓に代わって体内を浄化する治療法です。血液透析と腹膜透析がありますが、患者さんの生活スタイルなど考えて選びます。

 血液透析は週3回、1回につき約4時間かけて、体の外に血液を取り出して、血液を浄化、不必要な水分を取り除いてから体に戻します。この治療を怠ると命にかかわります。リラックスできる環境の中で安心して透析を受けられることが、この病気と付き合っていくこつです。当院の透析センターでは専門医が治療にあたり、人工透析において35年のベテラン臨床工学士や地元・小城の看護師、管理栄養士を配置し、何でも話し合える状況を整えています。移動が困難な一人暮らしのお年寄りは送迎し、糖尿病などの治療も併せて行うことも可能。個人用テレビやリクライニングベッドを備え、週3回の人工透析が苦にならないように配慮しています。一生続く透析治療ですから、家族と医療スタッフがチームで患者さんを支えていくことが大事になります。


透析センターのスタッフの皆さん

心筋梗塞や脳梗塞のリスクも

 慢性腎臓病の予防には、原因となる糖尿病や高血圧、動脈硬化にならないように生活習慣を是正し、食生活の改善、運動、血圧のコントロール、高血圧の一因になるタバコをやめるなど、原因を絶つことが大事です。慢性腎臓病があると心筋梗塞や脳梗塞のリスクも高まりますから、注意が必要です。

 自覚症状がない慢性腎臓病を発見するには検査しかありません。尿検査で尿たんぱく、血液検査で血液中のクレアチニン数値をチェックします。病状がある程度進行すると完治することは難しいですが、進行を止めることはできます。早期に発見して、医学的な治療と生活習慣の改善で早期対策をしてください。


明るい雰囲気の透析センター

MEMO

熱消毒で安全に治療

 人工透析の機器では、頻繁に外気や人の手に触れる人工腎臓とのジョイント部分が内部ヒーターで熱消毒して清潔な状態を常に保っていますから安全に治療を受けてもらえます。また、透析治療には大量の水が必要ですが、天山からの豊富な伏流水を利用していますから、災害時にも安心です。

ドクター紹介

岸 知哉
ひらまつ病院透析センター 腎臓内科医

きし ともや 1996年、佐賀医科大学(現佐賀大学)卒業。佐賀大学医学部内科(腎臓内科)を経て2016年からひらまつ病院透析センター腎臓内科医。日本透析医学会専門医・指導医、日本内科学会・総合内科専門医、日本腎臓学会専門医。

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