京都議定書に代わる地球温暖化対策の取り組み「パリ協定」が、11月にも発効する。各国が相次いで批准に踏み切る中、日本の出遅れが目立つ。

 パリ協定は、今世紀後半に世界の温室効果ガスの排出量を「実質ゼロ」にすることを目指す。具体的には、産業革命前からの気温上昇幅を2度未満、できれば1・5度に抑えるという目標を掲げている。

 これまでにない意欲的な内容で、昨年12月に協定がまとまった時には、ホスト役を務めたフランスのオランド大統領が「気候変動と戦うための最も美しく平和な革命を成し遂げた」と宣言するほどだった。

 最大の特徴は、先進国と発展途上国を、ほぼ同じように扱っている点である。京都議定書では、歴史的に温室効果ガスを排出してきた先進国だけに排出削減の義務を課していたが、排出量が急増している中国などは対象から外れていた。今回は発展途上国にも同じ水準の削減義務を負わせている。

 これによって、対象国は京都議定書の38カ国・地域から、197カ国・地域へと地球規模に広がった。ここで決めたルールが、今後の世界標準になる。

 すでに、排出量の4割を占める2大排出国の米国と中国をはじめ、各国が相次いで批准しており、発効の要件である「55カ国、排出量55%以上」が見えてきた。欧州連合(EU)やドイツ、フランスも批准を急いでおり、11月にモロッコ・マラケシュで開かれる国連・気候変動枠組み条約第22回締約国会議(COP22)で発効する見込みとなった。

 各国が批准を急ぐ背景には、協定が発効し、具体的なルール作りに参加できなければ、自国に不利な条件をのまされかねないという危機感があるからだ。このままでは、日本抜きでルール作りが進むことになる。

 臨時国会で、批准を急ぐよう促された安倍晋三首相は「協定を今国会に提出し、迅速な締結へ全力を尽くす」と述べはしたが、ほかの主要議題にはじかれて審議日程は見通せないままだ。

 日本の温室効果ガス排出量は、世界の3・8%近くを占めており、世界第5位の“排出大国”だ。この分野で国際的なリーダーシップを発揮すべき立場のはずだ。

 この臨時国会で、政府・与党は環太平洋連携協定(TPP)関連法案の成立を最優先と位置づけている。TPP特別委理事の自民党議員が「強行採決」と口走るほど前のめりだが、米国の事情で発効の見込みが薄くなったTPPに力を注いでいる場合だろうか。

 パリ協定は、世界の温室効果ガスの排出量を地球規模で管理しようという発想であり、二酸化炭素の排出にコストがかかる時代がやってくる。日本の産業界は排出量取引には後ろ向きだが、パリ協定が実際に動き出せば、経済的にもどれだけの影響が出るか、計り知れない。

 世界各地で、猛暑や暴風雨、干ばつなどの異常気象が相次いでいる。世界が同じ方向に走り出そうとしている今、日本だけが傍観しているわけにはいかない。11月のモロッコでの「COP22」に間に合うよう、最優先でパリ協定の批准を進めるべきではないか。(古賀史生)

このエントリーをはてなブックマークに追加