「単なるコメ経営ではなく、地域経営という視点が大事」と訴える小林元助教=唐津市の唐津シーサイドホテル

 生産組合リーダー研修会が唐津市であり、広島大学大学院の小林元助教が「10年後の地域農業を考える」と題して講演した。小林助教は、国の農業政策が米価を下落させ、米需要が流動化している現状を分析。「今後は単なるコメ経営ではなく、地域経営という視点が大事になってくる」と訴えた。小林助教の講演要旨を紹介する。

■講演要旨 

 今、我々が考えないといけないのは、地域や農村をどう守って次の世代に渡すかということ。そのためには安倍政権の「アベノミクス農政」が目指すところを知る必要がある。

 政権は「強い農業」を掲げている。農産物輸出強化、6次産業化、農地集積・大規模化を見据え、生産資材価格の引き下げも加わった。ただ、国が想定する担い手は、大規模な認定農業者や集落営農組織などに限定されつつあり、細々と農業を続ける「農民」を想定していない。

 その目標の一つは、米の生産コストの4割削減だ。1俵(60キロ)当たりの生産費(全国平均)は1万5957円で、将来的に9600円まで引き下げるのが目標。9600円でなんとかやっていける農家をベースに考えていて、もっと言えば米価も同じラインに抑えたいと考えている。

 米市場では既に中間から低価格帯の供給が過多となり、米価全体が押し下げられている。高齢化と人口減で日本人の“胃袋”は縮小し、米価は下がらざるを得ないだろう。

 こうした動向も踏まえ、北海道は、ブランド米から無洗米などの普及型、加工・業務用までを一括して売り込み、価格決定力を保つ戦略に転換した。新潟もコシヒカリにこだわらず、コシイブキなどを増やして幅広い価格帯に対応できるようにしている。

 生産調整政策の見直しが本格化する2018年までに「わしがつくるコメはうまい」という考え方から脱却し、品質と売り先を確保した上でコメ作りを進めることが求められる。

 農地を有効利用してコメ以外の作物と組み合わせることも必要だ。ただ、むやみに新しい野菜に手を出しても、ある程度の量が確保できなければ売り先も見つからない。佐賀県全域で地域農業を考え、産地をつくって行く必要がある。佐賀県におけるタマネギは成功例の一つだろう。

 今後は単なるコメ経営ではなく、地域経営という視点が大事になってくる。農村が活力を失っているのは事実だが、まだまだ地域には粘り強さがある。今のうちに次世代につなぐ仕組みをつくる必要がある。

 天皇賞を受賞した農事組合法人「ファーム・おだ」(広島県東広島市)は、話し合いを重ねて地域組織をしっかりつくった。農地に有機物を入れて豊かな土とし、野菜ハウスなどを設置。経営が安定してきたところで若い人を雇い入れ、女性が活躍できる場も設けた。段階を踏んで改革を進めてきたのである。

 多様な地域住民が参画し、無理なく改革を続けられるようにすることが大事だ。

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