シンガポールの料理人やバイヤーを招いた食肉加工場の見学会。ステーキ用以外にも多様なカットができることなどを説明した=佐賀市久保泉町のAコープ佐賀ミートセンター

 JAグループ佐賀と佐賀県が進める「佐賀牛」など県産牛肉の海外輸出が好調だ。2015年度の輸出量は、新たにベトナムへの出荷が始まったこともあり、前年度比7%増の約46・3トンに達した。本年度上半期も前年実績をさらに2割程度上回っている。

 佐賀牛など県産牛肉は、香港を筆頭に米国やシンガポール、タイ、フィリピン、ベトナムに輸出。著しい経済成長で富裕層を中心に購買力が高まっている国々に販路を広げている。ただ、松坂牛や神戸牛など伝統銘柄に加え、宮崎や鹿児島など大産地も参入し、産地間競争は激化している。

 「牛が育った環境の良さも消費者に訴える力になる」-。8月末、JAさが子会社の食肉加工場や、西松浦郡有田町の牛舎を訪問したシンガポールの視察団は、日本の衛生管理意識の高さに驚き、熱視線を送った。高級レストランの男性オーナーは「日本産のフルコースでフェアを開けば喜ばれるだろう」と語った。

■情報発信に力

 県やJAは、他産地との差別化を図るため、情報発信に力を入れている。現地のバイヤーや料理人らを招待し、生産現場や食肉加工場などを案内。さらなる販路開拓や取扱量拡大を狙っており、各国の視察団の受け入れが年末まで詰まっている。

 ただ、認知度が高まる一方で、輸出先での調理方法はステーキ以外にほとんどなく、ヒレやサーロインなど高級部位しか出荷できていないという課題もある。中華レストランの経営者は「油を多く使う中華料理で(脂が多すぎる)和牛の使いどころは難しい」とこぼす。

■調理法を提案

 すき焼きや焼き肉で使う肩やバラの部位は単独では採算性の問題もあって海外販売は難しい。調理法も知られておらず、対策として日本から料理長を派遣。しゃぶしゃぶやせいろ蒸しなど、中華圏にもなじみのある調理法を提案している。ぽん酢しょうゆのレシピも教え、現地での提供方法を一緒に研究して販売量の上積みを図る考えだ。

 さらに、ブドウやイチゴなどの輸出拡大や、インバウンド(訪日外国人)誘致にも期待がかかる。JA直営レストラン「季楽」は、佐賀・福岡の年間利用客約10万人のうち、すでに4分の1はアジア方面からの観光客が占めている。

 JAさが畜産酪農部の立野利宗技術参与は「輸出事業は佐賀を世界に売り込むだけでなく、ブランドイメージを定着させて国内価格を安定させる意味も大きい。単純な価格競争でなく、いかに“物語”を作って売り込んでいくかが鍵になる」と話す。

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