2014年4月に報道機関に公開されたフリーゲージトレインの試験車両。同年11月に部品の不具合が見つかり耐久走行試験を中断した=熊本県の熊本総合車両所内

 九州新幹線長崎ルートに導入予定で、部品の不具合で開発が遅れているフリーゲージトレイン(軌間可変電車、FGT)は、改良台車の回転試験が終了し、部品の分解・検査が進められている。試験結果をまとめた上で今秋の専門家による技術評価委員会で、中断している耐久走行試験の再開について判断が下される。判断結果によっては、新幹線整備に関する議論の行方が大きく変わる可能性があるだけに、佐賀、長崎両県の関係者は注目する。

 走行試験は2014年4月から始めたが、同年11月下旬に部品の不具合が判明した。車軸軸受けで潤滑油流出を防ぐ部品の一部が欠けていたほか、軸受けと接触する部分の車軸に摩耗が見られた。高速走行時の振動などが原因とみられる。

 開発主体の鉄道・運輸機構では、車軸と軸受けの隙間を縮小したり、軸受けの接触面を曲面に加工するなどして圧力を最大で約7割低減させる改善策を検討した。潤滑油を封じ込める部品の欠損対策では、材質を変更、形状を一部変えて強度向上を図った。

 改良台車は今年5月から8月末まで鉄道総合技術研究所(東京)で回転試験を実施した。屋内で時速130キロから速度を上げながら4段階で行い、最終段階では、営業走行時の振動の影響を評価するために一定の荷重をかけ、時速270キロで9千キロ分をこなした。「大きなトラブルもなく終えた」(国交省)という。

 現在、台車を分解し、部品の摩耗状況などを調べており、耐久性や安全性の評価をまとめる。技術評価委員会は、この評価を踏まえて走行試験の可否を判断するが、いくつかの条件のクリアが必要になる。

 営業車両の検査目安とされる走行距離60万キロ程度の耐久性があるのか。車軸の摩耗の限界値や目安の設定、それを検査するための技術や手順が確立できているか。そして、検査周期や維持管理費が一定の水準に収まる見通しなのか。

 この「宿題」をクリアして初めて走行試験再開の道が開けるが、ハードルの高さを指摘する声も。自民県議の1人は「車軸というFGTの肝部分でのトラブルは重大。安全にも関わるだけに相当高い水準を求められるはず」と懸念する。

 「物言い」がつけば、FGT開発はさらに遅れる。在来線特急と新幹線を乗り換えるリレー方式での22年度暫定開業後、量産車両による全面開業は25年春以降と見込んでいるが、ずれ込むとなると全線フル規格での整備を求める声が大きくなることも考えられる。

 佐賀県は「(FGT導入を前提とした)半年前の6者合意をしっかり守ってもらうだけ」(新幹線・地域交通課)とくぎを刺す。

 ただ「フル規格待望論」が根強い長崎県では、沿線自治体議会の議長らでつくる推進団体が2月に発足、7月には県内全21市町に広がり機運が高まっている。

 9月上旬、長崎県議会の田中愛国議長は東京で佐賀県関係国会議員らと別件で面談した際、フル規格の検討にも言及した。国会議員の1人は「技術的な問題が生じた場合に備え、さまざまな手を打っておきたいのだろう」とみる。

 ある長崎県議は「山陽新幹線への乗り入れも困難という観測もあり、評価委の結論を待つことに意味はない」とフル規格議論を佐賀側に呼び掛ける時期を探る。

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