削りの作業に神経を集中させる白須美紀子さん。「作品の大小にかかわらず、丁寧に仕事をするのが第一」と語る=有田町岳の矢鋪與左衛門窯

伝統工芸士に認定された後は、食器や花瓶など自分の作品も手掛けている

■基礎体得、独創の域へ

 伊万里・有田焼伝統工芸士でただ一人の女性ろくろ師。男性でも相当の体力を必要とする重労働だが、身長147センチと女性でも小柄な方の白須美紀子さん(37)は「女性であることをハンデと感じたことはない。絶対的な力と体格の差はどうにもできないので、技術でカバーするしかない」。屈託のない笑顔で答えた。

 幼少期から、絵を描き、ものを作るのが好きで、「自分がやりたい要素が全て詰まっているのが焼き物だった」と語る。18歳で有田窯業大学校に進み、絵付科で1年、専門課程で2年、研究科で1年学んだ。ただ、在学中は授業で出される課題をこなすことで精いっぱい。卒業を前に「基本が身についていない」と気付いた。「少なくともあと10年は修業を積もう」と心に決め、ろくろの名手として知られ、後に現代の名工となる矢鋪與左衛門(やしきよざえもん)さん(70)に弟子入りを志願した。

 矢鋪さんはほめて伸ばすのがうまく、弟子にも優しく接するが、技術に関しては妥協を許さない厳しい目を持つ。基本の手さばきを体で覚えるため、決められた時間内で数をこなす課題が与えられた。ハマから始まり、飯わん、煎茶、湯飲み、皿、大物と続く全ての課題が終わるまで約8年。住み込みの修業も経験し、師匠の丁寧で素早い仕事ぶり、職人として作品に向き合う姿勢を学んだ。

 伝統工芸士は2012年度、3度目の挑戦で合格した。「基本が終わらないと自分の作品に取りかかってはいけない」と最初に心に決めた通り、窯での作業と技術の練習に励んできたが、合格を区切りに自らの作品にも取り組むようになった。

 「遠慮せずにどんどん作って、自分をもっと表に出していい」。矢鋪さんもまな弟子の成長を喜び、「現代の百婆仙(有田焼創業期に活躍した女性陶工)になれる存在」と期待を寄せる。

 職人としての基礎固めを終え、次のステップに移った白須さんは食器や花瓶などを手掛ける。ろくろ成形の器に窯大で学んだ絵付けや彫りの加飾を施し、「一つ一つの作品に心を込め、使う人のことを考えながら作っていきたい」。白磁を追求する師匠と作品の方向性の違いはあるが、取り組む姿勢は一致する。

■プロフィール

 しらす・みきこ 1978年、佐賀市生まれ。有田窯業大学校で4年間、絵付けやろくろを学んだ後、2000年から有田町の矢鋪與左衛門窯で修業に入る。12年度に伝統工芸士(ろくろ)認定。14年には内閣府の「女性のチャレンジ賞」を受賞した。同窯は有田町岳乙3360-2、電話0955(46)4925

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