NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」は、雑誌「暮しの手帖」の創刊者の一代記。放送は終わってしまったが、戦争中の暮らしを特集する話が出てきたのは最終盤◆すると「その特集号を持っている。佐賀の人の日記も載っていますよ」と教えてくれたのが、佐賀市の力丸喬之(たかし)さん(82)。大切に保管されていた現物をお借りした。日記の主は、今の佐賀市兵庫町若宮に住む田中仁吾さん。昭和20(1945)年の年明けから終戦までの、農家から見た記録である。発行は68年◆黄色く日に焼けたページをめくると、農村での暮らしぶりが事細かに書かれている。地方でも食糧事情は悪く、聞いたこともない親戚がコメとの交換の品物を持って次々と訪ねてくる◆一方で、連日のようにコメ供出の話し合いである。みんな自家用の飯米だけは死守したい。「村長さん、命令、命令ちゅうてェ、供出は完納しても、自家に食うとの足らんとは、どぎゃんしてくれるかんた」と迫る場面は切実だ◆空襲におびえ、竹槍(たけやり)訓練をするのだが、「今どき、竹槍どん持って戦争してなんの勝(かと)うかんたァ」。勝ち目のない戦いとは薄々(うすうす)分かっていたのである。でも、つらいだけでは生きていけない。飲んだり食べたりの場面も出てきて、ささやかな幸せを大事にする日常が見えた。人間の強さを教えられる。(章)

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