町の現状や課題を踏まえ、理想の将来像について活発な意見が交わされた=有田町役場

 佐賀新聞社は、有田町の地域振興をテーマにした「まちづくりを語ろう会」を町役場で開いた。窯業や農業、町おこしの現場で活躍する町民6人と山口隆敏町長が、有田焼創業400年を迎えた町の現状と課題、理想の将来像を語り合い、活性化の糸口を探った。

【出席者】

 原田元さん(55)(佐賀県陶磁器工業協同組合理事長)

 佐藤哲也さん(43)(施設野菜農家)

 中村清吾さん(40)(高麗庵清六窯)

 池田徳幸さん(38)(池田養豚場代表)

 佐々木元康さん(33)(有田町地域おこし協力隊員)

 田代美由紀さん(30)(「岳×なんがわら農陶連携プロジェクト」代表)

 山口隆敏・有田町長

【進行】

 澤野善文・佐賀新聞社編集局長

■有田焼400年、現状と課題

 -まずは自己紹介を兼ねて皆さんの活動を教えてほしい。

 原田 窯元の3代目で、佐賀県陶磁器工業協同組合の理事長をしている。東京での学生時代、有田焼の知名度の高さに改めて気付いた。佐賀県出身と言うより、有田出身と言う方が通りが良かった。組合に加盟する窯元は30年ほど前は160~170社あったが、現在は96社。窯業を盛り上げ、若い人たちが安心して後を継げるようにしたい。

 佐藤 農家の3男で、東京で出版の仕事に携わり、2年前に帰郷した。今は施設園芸でキュウリ作りにどっぷりはまっている。有田の良さは、分からないことをすぐに聞ける人が身近にいること。特にキュウリ部会は若い人が多く、情報交換することで他産地と競争できると信じている。

 中村 うちは祖父の代から焼き物作りをしている。焼き物を志したのは、94歳で亡くなった祖父が生き生きと楽しそうにろくろに向かう姿を見てきたから。磁器発祥の地有田で育まれたもの作りの雰囲気を大事にしたい。

 池田 10年前にUターンし、家業の養豚業に入った。家族経営で1500頭ほど飼っている。養豚では飼料代の比重が大きく、何とかしたいと思い、食品工場の残りかすを餌にするエコフィードにも力を注いでいる。配合飼料と比べると、脂身の甘さなど、うまみが違うようだ。

 佐々木 製薬会社の研究職から、町が募集した地域おこし協力隊員になった。東日本大震災の復興ボランティアに行き、南三陸町で地元のために頑張る人たちの姿を見てうらやましくなったのがきっかけだ。もともと有田出身だが、保護者のつながりや子育て環境の素晴らしさを感じている。

 田代 金融機関や和歌山県の高野町役場に勤め、昨年帰郷した。農業が盛んな岳地区と、陶磁器店などがある南川良原(なんがわら)地区が連携した町おこしを考えるグループの代表をしている。外に出たからこそ分かる地元の良さを広げていきたい。

■「もの作りの町」で観光浮揚

 -それぞれの立場から町づくりに向けた考えを。

 佐々木 移住定住促進や空き家活用に取り組み、約1年になるが、「古民家カフェをやりたい」といった相談や問い合わせが全国から来る。日々感じるのは、有田は古い町並みと自然のバランスが絶妙ということ。SNSを使って町の良さを情報発信し、有田を少しでも身近に感じてもらえればと考えている。

 原田 4、5年前から、海外のデザイナーと会うようになったが、彼らは異口同音に「有田は観光の町になれる。仕掛けないと駄目」と言う。もの作りに関わる人にとって九州陶磁文化館、窯業技術センターなどの施設や、泉山磁石場などの風景は素晴らしく魅力的なのだろう。できることは限られるかもしれないが、観光浮揚の全体像を考える手伝いをしたい。

 田代 10月に始まった有田まちなかフェスティバル(ありフェス)では、棚田に有田工高生らがデザインしたTシャツを展示する。地元産食材を加工し、有田焼に入れて販売する企画も行う。町おこしの主役は、自分を含めて町民。新しいものを自分たちでつくるワクワク感を大事にしたい。

 佐藤 作って売るだけでは収入は伸びない。これからは加工品にも挑戦したい。お隣の佐世保市の佐世保バーガーのように、グルメの町おこしを夢見ている。町内には牛、豚、鶏、玉ネギなどの特産品がある。カレーにして有田焼の皿とコラボしたらと考えている。

■ブランド力は多様性の中に

 池田 自分のことで精いっぱいで、地区のことに積極的でなかったと感じる。イベントがあれば自分の所の肉を提供するなど、できることで協力していけたらと思う。住んでいるところなので、役立ちたいという思いはある。

 中村 焼き物作りの技術が進化し、人の手がかからなくなっている。経済的合理性は増しているが、それだけにとどまらない有田焼の魅力を守りたい。高級磁器という有田焼のブランド力は多様性の中にある。

■描く町の将来像 「オンリーワン」を探して

 -皆さんの話を町長はどう感じたか。

 山口町長 皆さんには、夢を持ち、有田にとって何がオンリーワンなのかを考えていただきたい。ありフェスは有田の良いところを個人や団体、地域で考えてもらった。通年観光のきっかけになる。

 -皆さんが描いている町の将来像を教えてほしい。

 原田 組合のショールームを改装し、それぞれに特徴を持つ各窯元の作品を一堂に見られる拠点にする。伝統工芸士など技術者の紹介にも力を入れたい。

 佐々木 有田に住む人が自慢する町にしたい。有田焼は写真投稿のアプリ「インスタグラム」との相性がいい。料理を盛ることで器が映える。情報発信も工夫して続けたい。

 池田 国見山にかかる雲海を来客から褒められることが多い。私たちには子どものころから見慣れている光景だが、有田以外の人には素晴らしく映るようだ。その自然を生かすことはできないだろうか。

 佐藤 心の豊かさを感じる町であってほしい。環境を維持する上で農家の役割は大きい。自分も役に立てればと思う。

 中村 いろいろな焼き物が生まれる町にしたい。新しい技術がある一方で、人と自然の力でつくる焼き物があっていい。商品が安くないと生き残れない時代だが、安さだけでない手作りの技を残したい。

 田代 消費者が窯元の違いを分かるようになれば、楽しみが増すし、窯元も育つ。思いつきだが、役場の1階ホールのガラス張りを生かし、商業施設に入っているキッチンスタジオみたいに、わいわいやっているところを見せられないだろうか。有田の器と食材を使うことで、旧有田町と旧西有田町を結ぶことになる。

 山口町長 住んでいる人が楽しく生き生きと生活できる町にしたい。中村さんが「祖父が楽しくやっている姿を見て焼き物を志した」と話されたが、これが原点。窯業に限らず農業でも後継者の育成につながる。町に残って頑張る若い人を、行政として応援していきたい。

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