使用済み核燃料の中間貯蔵施設建設を巡り、一部住民が協力する意向を示した唐津市鎮西町串地区。夏場には25万本のユウスゲの花が広がる=7月15日

■原発は目の前、リスク同じ 

 原発の使用済み核燃料を保管する乾式貯蔵施設を巡り、唐津市鎮西町串地区の一部住民が建設に協力する姿勢を市に伝えた。外津湾を隔てて、玄海原発(東松浦郡玄海町)の原子炉建屋がはっきりと見える地区の多くは山林や耕作放棄地が広がり、岬には風力発電の白い巨大風車がそびえ立つ。「玄海に造るならうちに」。原発関連施設の誘致に動く住民たちには同様のリスクを負いながら、優遇措置は受けないまま衰退する地域の将来を憂い、悩んだ末の行動だった。

 唐津市に要望書を提出した住民グループ代表を務め、ユウスゲの里づくりの代表でもある古舘初美さん(68)は、増え続ける耕作放棄地を原発施設に活用し、地域の衰退に歯止めをかけたいと願う。「造らんで済むなら、造らんでよかとですよ。もし玄海町にまた造るというのなら、私たちの所に来てくれればというだけ」。要望した意図について、その言葉を何度も繰り返した。

 誘致を想定する海側の地区は、かつて畑だった地域が荒れ、雑木が生い茂る。数年前からイノシシが棲(す)み着き、イモなどを食い荒らしている。古舘さんは10年以上前から先頭に立って放棄地を耕し、作物の栽培やユウスゲの植栽を続けてきた。

 だが、「私が死んだら管理する者はおらん。全部荒れてしまう。自分のことだけ考えて、地区のことは何も考えんでよかとならいいけど…」。若者の流出に歯止めがかからない現状を危惧する。

 「円で描いたら5、600メートルしか離れていない。何かあったら一番危ない目に遭うのはここ。原発と一緒に寝とるのと同じ」と古舘さん。事故によるリスクを抱える一方、橋一本渡るだけの玄海町のような恩恵はない。「向こうは田んぼのあぜでもコンクリートにしてくれる。ハウスを造るにも補助金の率も全然違う」。同じリスクを抱え続けるのなら、という思いは募る。

 古舘さん自身、乾式貯蔵施設についての十分な知識を持ち合わせているわけではない。署名は、区の会合を開いたわけではなく、道端などで会った地権者に声を掛け、約2カ月かけて集めた。誘致には反対意見もあり、区の総意ではないが、「みんなに印鑑ばもろうとっけんね。簡単には(引っ込められない)」と話す。

 使用済み核燃料の再処理や最終処分場建設も見通しが立っていない中、中間貯蔵施設の確保は、電力会社にとって避けて通れない問題だ。古舘さんは「あくまで手を挙げただけのこと」とし、「利用してもらえるなら公園でも何でもよかとですよ」とつぶやいた。

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