佐賀新聞社前の掲示板に張り出された紙面に見入る男性(奥)=佐賀市天神3丁目

 屋外に張り出されるニュースは毎朝、更新される。佐賀市の佐賀新聞社前にある掲示板。午前8時半すぎ、まだインクの匂いが残る真新しい紙面が、前日の紙面と入れ替えられる。

 新聞1部30ページ前後のうち、掲示するのは1面、スポーツ、地域の話題、事件・社会の4ページ。「どんどんどんの森」公園の一角にある新聞社の前は市民の散歩コースでもあり、足を止めて読む人が多い。常連もいて、ほとんどは高齢者だ。

 近所に住む中島利夫さん(66)は、通学や通勤の時間帯が過ぎた午前10時すぎ、自転車で掲示板の前に乗り付ける。「持病があって運動もしないといけないんでね。毎日30分、自転車に乗って、ここに必ず立ち寄る」。全ての記事を10分ほどかけてじっくり読む。5年続く日課だという。

 もとは購読していた。「新聞はよく読んでいたけれど、定年退職後にやめた。読みたくなれば近くに図書館もあるから」。そう考えていたが、閲覧コーナーはいつも年配の男性でいっぱい。なかなか手に取ることができず、再びペダルをこいで掲示板に向かう。

 日本新聞協会によると、新聞の1世帯当たりの部数は2008年に1・0部を割り込み、15年には0・8部になった。総発行部数の減少に加え、核家族化で世帯数そのものが増えたことが背景にある。高齢者だけの世帯も増え、年金暮らしになったときに購読を取りやめるケースもある。

 公園のそばに住む女性(83)もそうした一人。洋裁を教えていて、年金をいくらか補う収入はあるものの、生活費に余裕はない。

 それでも、新聞を公共施設などで見掛けると必ず手に取る。「テレビで流れないニュースも載ってるからね」。亡き夫が熊本県阿蘇市出身で、かつて夫婦で20年近く暮らした。熊本地震の被害は人ごとと思えず、その後の暮らしの行方をつづる記事に目を凝らす。

 市内の小川基行さん(66)は、どんどんどんの森にある佐賀市立図書館の新聞コーナーがお気に入りだ。毎日ここで6紙を読み込む。元教師だったり、同い年だったり、ここで顔見知りになった人も多い。

 「会社勤めを終え、10月からは毎日が日曜日。現役のころも仕事のために何紙も読んでいたけど、ゆっくり時間をかけて読み比べるのも面白いですよ」。このところの関心事は米大統領選。各紙の論調の違いにも詳しくなってきた。

 新聞は、高齢者が気になる社会をのぞく窓でもある。

     *

 宅配制度の下で普及してきた新聞は、家庭以外でもさまざまな場所で読まれ、親しまれてきた。15日からの新聞週間に合わせ、新聞がある空間の日常や、映し出される社会を切り取る。

=新聞週間代表標語=

新聞を 開くその手で ひらく未来

このエントリーをはてなブックマークに追加