2015年7月1日、「うるう秒」が挿入され「8時59分60秒」と表示された情報通信研究機構の電光掲示=東京都小金井市

 来年の元日は、「うるう秒」で1秒長くなる。地球の自転と標準時とのずれを調整するため、午前8時59分59秒と9時00分00秒の間に「8時59分60秒」が挿入される。ゆったり過ごす正月の時間帯だが、システム障害警戒で働くエンジニアも。電子機器への影響から存廃が長年国際的にも議論され続けているこのわずか「1秒」には、多くの国や企業、人が関係している。

▽歴史

 時刻はかつて、地球が1回自転するのを1日(24時間)とする「天文時」が使われていたが、地球の自転は厳密には一定ではない。そのため1950年代から、原子の持つ固有の周波数をもとに時間をより安定的かつ厳密に定義する「原子時」が使われるようになると、天文時との間にほんのわずかのずれが生じるようになった。

 このずれが0・9秒以上にならないために、数年に1度、世界一斉に日本時間の元日か7月1日に実施されるのが「うるう秒」だ。72年に初めて実施され今回が27回目。元日に挿入するのは2009年以来8年ぶりになる。

▽トラブル

 以前はあまり問題にならなかったが、コンピューターが発達したことで、秒単位で高度な処理を行う企業のシステムなどへの影響が懸念されるようになった。実際、12年には会員制交流サイトや、国外の航空会社でサービスが停止するなどのトラブルが起きた。

 このため平日に実施された前回の15年には各企業が「その日だけ修正プログラムを入れる」「1秒を細かく分散させる」などの対策を実施。大きな問題は起きなかった。

 ただ今回も警戒は必要だ。東京のIT会社「アークシステム」のエンジニア飯出和弘さん(40)は「事前準備で十分に対応はできるようになったが元日は警戒のため自宅待機になる。企業によっては休日出勤する担当者もいるだろう」と話す。

▽議論

 気象庁は前回に続き、東海沖から熊野灘にかけて設置されている7観測点の海底地震計のデータ利用を午前9時前後に一時停止する。うるう秒により地震波の観測データに乱れが生じ、システムが地震と誤認する恐れがあるという。

 この「1秒」の存続は長年国家間でも議論になっている。トラブル懸念や対応コストの面から日本や米国は廃止を主張。だが英国やロシアは反対し、昨年11月にジュネーブで開催された国際会議では結論が23年まで先送りされた。

 わずか1秒のために企業や国家が対応に腐心する「うるう秒」。一方、日本の標準時を決定する情報通信研究機構(東京都小金井市)に掲げられた時計の電光掲示などには毎回「8時59分60秒」が表示され、多くの子どもたちが見学に訪れる。

 同機構の担当者は「時間とは何かなどを知る良い機会になる。ホームページでもうるう秒について詳しく記しており、元日は家族でこの1秒について一緒に学んでみては」と呼び掛けている。【共同】

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