もう30年ほど過ぎたのに、今も新聞配達のアルバイトをしていた頃の夢を見る。とてもリアルで、記憶よりも鮮明だ。自転車で配達の途中、この家が購読者かどうか悩むところで夢だと気づき、目が覚める。それを繰り返す◆毎年、新聞配達エッセーコンテストには配達員への感謝の思いが書かれた作品が数多く寄せられる。読むと昔を思い出し、感慨深い。今年は熊本地震の日を振り返った水野貴子さん(49)=熊本市=が最優秀賞に選ばれた◆避難所で夜を過ごした後に自宅に戻ると、いつもの朝のように新聞が玄関に届いていたという。配達員とはいえ、同じ被災者だ。驚きとともに「これで日常が取り戻せる」と勇気がわいたとつづっている。きょうの本紙の4面に全文があるので、ぜひ一読してほしい◆大災害時は速報性のあるネット報道が強みを出す。しかし、人々の心が揺れ、不安が長期化するときこそ、新聞が日々をつないでいく責任があると思う。形あるものを毎日届けることで安心感も一緒に渡せるはずだ◆コンテストでは「新聞配達でたくさんの人と朝から話せるのはとても幸せ」と書いた青森県の女子高校生も入賞した。いま新聞週間(15~21日)。彼女たちのような若い配達員が夢や喜びを持ちながら新聞を届けられるように、一つ一つの記事に気持ちを込めたい。(日)

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