美濃焼の文化を意識したまちづくりを進めてきた小口英二さん。「カフェ温土」では若手作家の作品を展示販売している=岐阜県多治見市

■作家とともに商店街成長

 その商店街は10月になると、一部が若手陶芸作家のギャラリーに変わる。

 日本の陶磁器の約5割を生産する岐阜県南東部の美濃焼。主産地の一つ、多治見市にある「多治見ながせ商店街」の11店に、20人以上の作家が手掛けた作品が並んだ。6年目のイベント「商展街」で、焼き物のまちの風情を醸し出した。

 近くのJR多治見駅で開かれる「美濃焼祭」と時期を合わせ、県内外のファンを商店街に呼び込む。イベントの集客力はあっても、本来の狙いは、繰り返し訪れる観光客をどう育み、まちづくりにつなげるか。有田をはじめ、焼き物産地が抱える共通の悩みだ。

 多治見ながせ商店街に元からある陶磁器店は1軒。後継者不足で空き店舗が目立つ。駅から1キロ離れた地域には、昭和初期まで栄えた陶磁器問屋の風情ある街並みが広がる。この名所と駅をつなぐ商店街の再生は観光面でも課題だった。

 「美濃焼を中心にしたものづくり文化を生かし、多治見らしいまちづくりをしたい」。商店街再生に携わる多治見まちづくり株式会社事業課長の小口英二さん(37)はこう強調する。

 「織部」「志野」といった伝統の桃山茶陶から大量生産の和洋食器、タイルまで「無節操に、焼けるものは何でも焼いてきた」と、地元関係者が語る土地柄。伝統に執着せず、常に技術革新を追求してきた産地には自由な風土が根付く。

 独創性豊かな陶芸家を育てることで有名な多治見市陶磁器意匠研究所(通称・意匠研)にも自由な風土は共通し、有田など全国から若者が集う。修了後に多治見で活動する人もいるが、すぐに作家として活躍できるほど容易ではない。多くが働きながら作陶に励み、発表の場を探す。

 多治見ながせ商店街は、こうした作家の受け皿にもなっている。商店街のほぼ中心にある「カフェ温土」は、その象徴だ。地元食材の料理を若手作家の器で提供し、店内で作品を展示販売するだけでなく、意匠研の修了者数人がスタッフとして働く。カフェには工房が併設され、焼き物体験の教室を開くこともある。空き店舗を利用し、小口さんのまちづくり会社が2010年から運営している。

 料理を運ぶ森田愛子さん(31)は広島県出身で、意匠研を修了後、この店に勤めている。休日と夜は土に向かい、作家として独り立ちをする夢を追う。

 「カフェで働いているからこそ、同世代の作家や焼き物が好きな人とのネットワークが広がるんです」と森田さん。おしゃれな飲食店にとどまらず、そこに作家がいて器があるからこそ、新たな人と人とのつながりを生み、地元の人たちを交えたコミュニティーに成長しつつある。

■美濃焼

 岐阜県東濃地区(主に多治見市、土岐市、瑞浪市)の焼き物の総称で、製品としての規定はない。平安時代の須恵器から約1300年以上の歴史があるが、隣接する瀬戸焼と長く区別されてこなかったため、「瀬戸もの」のイメージも強い。主産地の13地区の窯元ごとに産地分業化が進み、製品の種類や特徴が異なる。量産体制を整え、1985年は対米輸出が約半分を占めた。タイルを含めた陶磁器の出荷額は550億3200万円で全国シェアは51.9%(2013年工業統計)。

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